僕が出した答えは「LCCと貨物を狙う!」
赤字空港を抱えた、知恵のない首長は日本航空や全日空みたいなメジャーな航空会社に「うちに飛行機を飛ばしてください」と言う。そんなこと、できるわけないじゃないですか。日本航空も全日空も民間会社なんですから、いつまでも赤字路線を維持できるわけがない。それでも政治家が出ていって、赤字路線を飛ばしてくれと頼む。「そのかわりに補助金を出すよ」と持ちかけるんですね。それじゃあ、根本的な解決になりませんね。僕は航空会社に「赤字路線は全部切ってくれていい」と言いました。
関西全体、日本全体の空港の状況から関西空港の強みや他空港との差別化、存在意義を考えるんです。関空は、成田や羽田よりもアジアに1時間分近い。そして成田や羽田と違って24時間空港なんです。海上にありますから騒音問題は生じない。余談ですがそもそも関空開業は伊丹の騒音問題が出発点だったんです。伊丹空港の周辺は現在住宅密集地。沖縄の普天間米軍基地と同じ状況です。普天間が危ないんだったら伊丹も危ないと思うんですけどね。伊丹の騒音問題が深刻化したので、空港を都心部の外に作ろうとなって、関空ができたんです。ところがいざ関空ができると、伊丹空港の周辺自治体は、伊丹は残してくれ!! となった。伊丹空港がなくなると街が廃れると気付いたんですね。どっちやねん!!! それで関空と伊丹が飛行機を奪い合う最悪な状況になってしまった。
成田や羽田と差別化を図るためには、そしてアジアに近いという強みを活かすためには、「LCC(格安航空会社)と貨物狙い」という作戦を立てたんです。低所得国のアジアがどんどん中所得国になっていく。特に中国ですよ。所得が上がると海外旅行が流行る。アジアから特に中国からとんでもない数の観光客が日本に来るだろうと予測した。まさに今言うところのインバウンドです。その当時はまだまだそこに目を付けている人は少なかったですけどね。
成田・羽田は欧米のビジネス客。関空は、アジアからの観光客+貨物。このような戦略で、国交省航空局と協議をして、関空をLCCと貨物の拠点空港にする戦略が固まった。全日空が筆頭株主になってピーチ・アビエーションというLCCを設立して、その拠点を関西国際空港に作ってもらうこともできた。貨物に関してはフェデックスの拠点を広州空港と関空のいずれかにする選択肢の中で関空が競り勝った。関西は医薬産業が頑張っている地域であり、関空に医薬品保管の冷蔵倉庫を作り、医薬品の輸出入がよりやり易くなった。今は農産物の輸出の戦略を実行に移し始めている。これらの動きは今の関空経営の好調につながっています。
そして今では、関空は利用客数が過去最高になり、2000万人をゆうに超えるようになった。外国人観光客も1500万人を超える状態に。そして2016年3月期連結決算において、営業利益は成田を超え、ついに日本一の稼ぐ空港になりました。かつての閑古鳥が鳴いて、今にも海の中に沈むと言われていた関空の状況が様変わりしたんです。
※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.12の一部です。