アメリカの次期大統領に、ドナルド・トランプ前大統領が選ばれた。国際ジャーナリストの矢部武さんは「米国ではトランプ氏の認知能力が問題視され、海外メディアは認知症の初期症状が出ていると報じている。1期目と比べて、2期目は周囲を“イエスマン”で固めると宣言しており、彼の暴走を止めるのは困難になるおそれがある」という――。
勝利宣言するトランプ次期米大統領=フロリダ州ウエストパームビーチ
写真=AFP/時事通信フォト
勝利宣言するトランプ次期米大統領=フロリダ州ウエストパームビーチ

トランプ勝利を不安視する声

78歳のドナルド・トランプ氏は来年1月20日、米国史上最高齢で大統領に就任するが、それははたしてこの国のために良いことなのだろうか。

というのも、詳しくは後述するが、米国では最近、精神科医や臨床心理士など医療および精神衛生の専門家から、「(トランプ氏が支離滅裂な発言を繰り返すのは)認知症の初期症状が原因の可能性がある」「トランプ氏には認知機能低下の兆候がみられる」などの指摘が相次いでいるからである。

実際、今回の大統領選では、トランプ氏の選挙集会や記者会見などで話の筋が通らない、とりとめのない発言が目立った。

たとえば、2024年6月9日、ネバダ州ラスベガスで行われた集会の演説で、トランプ氏は環境政策に関連した電気自動車について話し始めたと思ったら、突然、電動ボートの沈没やサメの襲撃の話に移った。

トランプ氏は次のように話した。

「船が沈みつつあるとします。船に搭載された大きなバッテリーの上に私は座っています。“船が沈むと、私は感電死するのでしょうか?”と人に聞くと、“そんな質問を受けたことはない”と言います。でも、私は船に乗っていて、船が沈んだら、バッテリーが搭載されているので心配になります。水が入ってきて、左を見ると、10メートルのところにサメの姿が見えます。感電死とサメに襲われて死ぬのと、どちらを選びますか? 私は感電死を選びます。毎回そうするでしょう……」(‘Why Trump’s weird rant about boats, batteries and sharks matters’ MSNBC)。

この集会が行われた日のラスベガスの気温は38度とかなり暑かったというが、その中で支持者たちはトランプ氏のとりとめのない話を延々と聞かされたのである。

ネット上ではそれに対する批判や嘲笑が相次ぎ、作家のスティーブン・キング氏はX(旧ツイッター)に「これは夕食の席で3杯目の酒を飲んだ後の痴呆の叔父の話を聞いているようなものだ」と投稿した。(ニューズウィーク、2024年6月10日)。