2016年の大統領選との大きな変化

認知機能の評価(診断)などを専門とする臨床心理士のベン・ミカエリス博士は、トランプ氏が2016年の大統領選で立候補した時と今回の大統領選での演説を比較分析したところ、思考パターンに明らかな違いが見られたという。

ミカエリス博士は2024年10月24日、PBSニュースアワーの番組で詳しく説明した。

「2016年、2017年から現在に至る間に起こったのは、ボキャブラリー(語彙)の違いというよりも、思考パターンの違いです。彼は直線的思考(順序立ててひとつずつ考える方法)を維持していないのです。たとえば、私たちはいま会話をして、話題に沿って話を進めています。あなたが質問し、私はそれに応えています。ある意味、ちゃんとしたやり取りになっています。

しかし、トランプ氏について言えることは、基本的に直線からどんどん離れ、問題から逸脱しているということです。他のアイデアを織りまぜて、会話の焦点がどんどんそれてしまうのです。ある話題について話し始め、話の筋を見失い、それてしまう。彼のスピーチのパターンにはそのような部分が多く見られます」

だから電気自動車について話し始めても、沈没船やサメの話にそれてしまったのかもしれない。

赤と青に分断された米国の国会議事堂と星条旗
写真=iStock.com/Douglas Rissing
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父親は認知症だと診断されていた

ミカエリス博士は、「正式な診断には実際に本人と対面して、検査をする必要があります。本人のいない所での診断はできません」と断った上で、こう続けた。

「私たちは皆、年齢とともに衰えていきます。私が目にしているのは思考プロセスにおける問題です。彼が認知症だと言っているわけではありませんが、全体像を見れば、それは何かを示唆しているのです。記憶障害、コミュニケーション障害、気分の変化、判断力の低下、性格の変化といった問題はすべて認知症の症状です。そして、確かにそれを示唆する証拠があります。こう考えるのは理にかなっていると思います」

加えて、認知症は遺伝すると言われているが、トランプ氏の家系では父親のフレッド氏が認知症と診断されていたことがわかっている。つまり、それによってトランプ氏が認知症になる確率は上がるということである。