ハリス氏に関するデマを拡散するも訂正せず
トランプ氏が人々を混同しても自分の間違いを頑なに認めなかったために、メディアを巻き込んで大騒ぎになったこともある。
バイデン大統領が選挙戦から撤退して、ハリス副大統領が民主党の大統領候補になった直後、トランプ氏は対立候補となったハリス氏に不利になる情報を広めようと記者会見で次のような話をした。
1990年代にハリス氏と不倫関係にあったとされる黒人男性のウィリー・ブラウン元サンフランシスコ市長とかつてヘリコプターに同乗し、墜落しそうになったことがあるが、その時に「ブラウン氏がハリスについてひどいことを話した」というのである。
しかし、メディアがこの話の事実確認をしたところ、ブラウン氏とトランプ氏がヘリコプターに同乗したという証拠は見つけられなかったという。ブラウン氏自身も「トランプ氏とヘリコプターに一緒に乗ったことはない」と否定した。
すると、トランプ氏はSNSで、「ニューヨーク・タイムズの2人のダメな記者が、元サンフランシスコ市長のウィリー・ブラウン氏と同乗したヘリコプターが野原に不時着したという私の話に疑問を呈した」と激しく非難した。
それから後になって、トランプ氏はヘリコプターに同乗した人を別の黒人政治家のネイト・ホールデン元ロサンゼルス市議会議員と混同していたことがわかった。その時はヘリコプターが機械のトラブルに見舞われ、ニュージャージー州に緊急着陸を余儀なくされたというのだ。
ということは、トランプ氏は2人を混同していただけでなく、「ブラウン氏がハリス氏についてひどいことを話した」というのも全くの嘘だったということになる。これはトランプ氏の生来の虚言癖と認知症の兆候の両方が現れた「事件」と言えるかもしれない。
トランプ政権に待ち受ける“2つのシナリオ”
2016年の大統領選の時から、精神科医としてトランプ氏を注意深く見てきたというガートナー博士は4月のラジオ番組で、「トランプ氏はますます精神的に不安定で、衝動的になり、理解不能な発言を繰り返すようになっている」と述べた上で、「再選されたら、在任中に完全に職務遂行能力を失うだろう」と付け加えた。
もしそうなった場合、トランプ次期大統領に待ち受けるシナリオとして主に2つ考えられる。
1つは憲法修正第25条を発動して、トランプ氏を解任することだ。第25条は「大統領が“職務上の権限および義務を遂行できない”と副大統領と閣僚の過半数が判断した場合、大統領は職務停止となり、副大統領が大統領職の権限・義務を遂行する」と定めている。
これが承認されれば、J・D・ヴァンス副大統領が残りの任期を務めることになる。しかし、この条項が発動され、承認される可能性は高くないと思われる。