「もう限界」と逃げる妻熟年離婚はなぜ増える?
「離婚したいんだけど」
パートナーから突然、このように切り出されたら、あなたはどうしますか。
離婚カウンセラー、夫婦問題研究家、公認心理師。夫婦の問題に悩み苦しむ人を一人でも多く救いたいとの思いから、「離婚カウンセリング」という前人未踏の分野を確立。36年間で4万件超の相談を受ける。『なぜ「妻の一言」はカチンとくるのか?』(講談社+α新書)など著書多数。
子どもはすでに成人して、自分の定年退職も視野に入り、老後は妻と二人で過ごすものと信じて疑わなかった夫であれば、妻からの思いがけない三行半に意気消沈したり、「今まで誰のおかげで生活してこられたと思っているんだ!」などと理由も聞かずに声を荒らげたりしてしまうかもしれません。
しかし、妻からの「離婚宣言」は、夫にとっては青天の霹靂でも、妻は何年も前から離婚を考えていた可能性が高いのです。
厚生労働省の人口動態統計(2024年)によると、24年に結婚したカップルは48万5092組。同年に離婚したカップルは18万5904組。あくまでざっくりとした計算ですが、3組に1組が離婚していることになります。離婚が最も多いのは30代夫婦ですが、そもそも婚姻件数が減っていることもあって離婚率自体は微増にとどまるものの、その中で顕著な増加傾向にあるのが「熟年離婚」です。
一般的に熟年離婚とは「結婚生活(同居期間)が20年以上の夫婦」の離婚を指します。同調査では、同居期間が20年以上の夫婦の離婚件数は4万件を超えており、これは離婚全体の21.9%。1995年は約3万2000件だったので、この30年ほどで9000件近く増えていることになります。
私の離婚カウンセリングには、50代、60代の奥様の多くが「もう限界です。夫とは金輪際関わりたくない」と言って相談にみえます。彼女たちは嫁姑問題で夫が自分の味方をしてくれなかったこと、子育てをワンオペで頑張っているのに一度も労ってもらえなかったことなどの不満を、コップに一滴ずつ水が満ちていくように長い年月をかけて蓄積してきました。それが、夫の定年や子どもの独立といった環境の変化を引き金として、堰を切ったようにコップからあふれ出してしまった。これが熟年離婚の現実です。
熟年離婚を申し出るのは6〜7割が女性側からという統計もあります。しかし、離婚カウンセリングの現場では、ここ数年は男性側から熟年離婚を切り出すケースも増え始めたと感じています。「人生100年時代」を自分ごととして考えたとき、夫たちも「人生、今の相手とこのまま終わってもいいのだろうか」という迷いが生じるのかもしれません。
これまで4万件超の離婚の相談を受けるなかで、離婚までの泥沼がどれだけ当事者の神経をすり減らすのか、間近でたくさん見てきました。私自身も離婚経験者なので、「顔も見たくない」「今すぐ家を飛び出したい」という気持ちはわかります。しかし、ここで感情的になってはいけません。夫婦として費やした長い年月で複雑に絡み合った「お金や家」の糸を解きほぐし、経済的準備を整えてから離婚に臨まなければ、あなたが「損」をするだけです。
感情的に別れると大損 単身高齢女性は貧困に
熟年離婚による経済的なリスクは夫婦のどちらにもありますが、特に深刻なのは妻のほうです。東京都立大学の子ども・若者貧困研究センター「相対的貧困率の動向」によると、65歳以上の単身女性の相対的貧困率は44.1%に上り、同年齢層の単身男性(30.0%)を大きく上回っています(21年時点のデータ)。同世代の婚姻状況別の貧困率を見てみると、既婚の13.5%に対し、離別は43.6%と跳ね上がります。死別の場合は32.0%とまだ少し低くなっているのは、遺族年金による下支えがあるからです。つまり、高齢女性は婚姻状態か、少なくとも死別した状態でないと、貧困リスクが非常に高くなるということです。
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