念願の田舎暮らしも3カ月で寂しくなった

還暦というのは面白い節目でしてね。60歳でまた0歳に戻るから、赤いちゃんちゃんこを着てお祝いする。一から人生をやり直すという意味らしい。みなさん、そうだと思いますが、人生に一区切りつけたくなるものですよね。私も、還暦を区切りに仕事もリタイアして、あとは実家のある長野で暮らそうと思ったんです。

清水 アキラ
清水 アキラ(しみず・あきら)
ものまねタレント。1954年、長野県生まれ。75年にザ・ハンダースを結成。78年に「想い出の渚」が30万枚を超す大ヒットとなり有線大賞の新人賞を獲得。87年、フジテレビものまね王座決定戦でチャンピオンとなり、ものまね四天王とよばれるようになる。

きっかけは、その前に1年間、仕事で箱根の旅館に住み込み生活をしたことでした。自分で決めてきたことだったんですが、妻も来て、一緒に過ごしたんですよ。そこで私が食事を作ったり、一緒に月を見たりね。

女房がコーヒーを淹れてくれて、それを飲みながら私は木々の葉っぱの絵を描いたりして。そんな生活をするうちに、還暦後は長野の実家で暮らしたいと思うようになりました。

夏は渓流でイワナ釣り、冬はスキーを楽しむ。春は山菜を採って天ぷらに、夏は野菜を収穫する。実家には温泉が引いてあって、露天風呂もある。悠々自適な暮らしを頭に描いて、さっそくリフォームをしようと思い立ちました。

ところが、妻は私がいくら「長野に行こうよ」といっても、承諾してくれない。もともと東京の人ですから、長野の寒さも近所付き合いも、ちょっとなあ、という感じです。その時に頭に浮かんだのが「卒婚」です。

離婚はしないけど、夫婦がそれぞれの人生を自由に歩んでいくのもいいんじゃないかと。「お互いもっと幸せになるために、船を2つに分けよう」という感じですね。

ゴールはどちらも“幸せ”という同じところにあるわけです。

「俺は好きなことをやるから、お母さんも好きなことをやってよ」と言いました。女房は、「好きなことなんてないし」と渋ってましたが、最後は私が押し切った格好です。2013年秋のことでした。

長野の実家は11LDK。広いんです。いくつかの部屋をつなげて40畳のリビングをつくろうと自分でリフォームを始めました。夜中にツルハシを持ってカンカン叩いて壁をぶっ壊したり。掘りごたつをつくって、壁紙を張り替えて、床を張り替えて……大工仕事が好きなんですよ、私。

妻は「300万円までならかけていい」って言ってくれたので、自分でできるところは全部やって300万円以内に収めました。

(構成=大島七々三)