トランプ大統領のイラン攻撃で、日本などの同盟国・同志国もエネルギー危機の煽りを受けている。その混乱をよそに、中国は制裁下の原油を割引価格で買い叩き、過去最高の約12億バレルを備蓄。瀕死だった“中国製品”が空前の輸出ラッシュで息を吹き返した。トランプ氏の軍事行動の皮肉な結末を、海外メディアが明らかにしている――。
二国間会談に先立ち、挨拶を交わしたドナルド・トランプ米大統領と習近平中国共産党総書記(2025年10月30日)
二国間会談に先立ち、挨拶を交わしたドナルド・トランプ米大統領と習近平中国共産党総書記(2025年10月30日)(写真=The White House/PD US Government/Wikimedia Commons

ホルムズ海峡を突破した中国タンカー

封鎖中のはずのホルムズ海峡を、偽装された中国タンカーが通過している。

2月28日、アメリカ軍とイスラエル軍がイランを攻撃。4月7日に2週間の停戦が合意されたが、イランはすぐさまホルムズ海峡を封鎖。世界は原油危機に突入した。

これに対しアメリカは4月13日夕方、今度は自らイランに対し、同海峡を封鎖した。イランの物流を断ち、譲歩を迫る構えだ。アメリカが「逆封鎖」に動く可能性があるとの海外機関による分析を、本サイトでは実際の封鎖に先駆けてお伝えした。4月17日にはイラン側が全面開放を宣言したものの、翌日には撤回。現在も緊迫した状況が続いている。

さて、逆封鎖の発効からわずか20分後、一隻のタンカーが封鎖海域へ向けて動き出している。中国所有の船舶である。

米ブルームバーグは4月14日、中国所有のタンカー「MVリッチ・スターリー」号がUAE・シャルジャ沖の停泊地を離れたと報じた。

奇妙なことに、同船が掲げていたのはアフリカ大陸南東部に位置するマラウイの旗だ。海を持たないはずの内陸国の国旗を、なぜ船舶が掲げているのか。

海峡封鎖初日にアメリカが犯した失態

無関係の旗を掲げた理由は、便宜置籍国を装った偽装工作だ。

イスラエル英字紙のエルサレム・ポストによると、自船の位置や針路などを知らせるAIS(船舶自動識別装置)も11日間にわたって偽の情報を発信していた。

積み荷は約25万バレルのメタノール。石油化学製品の一種で、イランの主力輸出品の一つだ。記録上はUAEで積み込んだことになっているが、実態はほぼイラン産だ。

同船は封鎖に阻まれ一度は引き返したが、未明、再びホルムズ海峡へ舳先を向けると、ついに封鎖を突破する。

海峡の封鎖にあたりアメリカが集結させたのは、2003年のイラク侵攻以来最大の海軍戦力だ。空母打撃群3群、艦艇21隻、航空機100機超、兵員1万人を投入したが、それでもMVリッチ・スターリー号は悠々と海峡を抜けた。

ペンタゴン(米戦争省。旧国防総省)はこの事実を認めておらず、「封鎖初日に海峡を通過した船はゼロ」と主張した。だが英BBCの検証部門であるBBCベリファイおよびエルサレム・ポストは、イラン関連船4隻と制裁対象船3隻の通過を独自に確認していると報じた。