イラン攻撃発表15分前に起きた巨額取引
アジア各国が供給確保に奔走するなか、中国は潤沢な石油備蓄を擁するほか、産業基盤は国産エネルギーを中心に駆動しており、影響は軽微だ。
CNNは、中国の製造業が2026年第1四半期も堅調な成長を続けていると指摘。新車販売ではすでに半数以上をEV・ハイブリッド車が占めている。ロジウム・グループが2025年に発表した調査では、EVが普及しなかった場合のシナリオと比較して、石油需要は日量100万バレル超も縮小したと指摘されている。
このようにそもそも中国は、石油への依存自体を急速に減らしつつあった。コロンビア大学グローバルエネルギー政策センターのエリカ・ダウンズ上席研究員は、米CNNの取材で、中国が実際にエネルギーショックを乗り切っていることから、同国がエネルギー安全保障のために行ってきた取り組みの正当性がある意味で証明された、と評している。
皮肉にも、その「正当性」を自らの軍事行動で証明したのは、対立するアメリカであった。
さて、アメリカ内部でも、この戦争から利益を得た「誰か」の存在が報じられている。
トランプ大統領のイラン政策発表の直前に繰り返された、巨額の先物取引。偶然で片づけるには、あまりに正確なタイミングだった。
3月23日、トランプ大統領がSNS「Truth Social」でイラン攻撃延期を表明するわずか15分前に、原油・株式先物で数十億ドル規模の取引があった。4月7日の停戦発表前にも、同様の取引が繰り返されている。
イラン戦争を金儲けの道具にしている
民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、「この不審な石油取引は、インサイダーが市場を操作した悪質な事例だと思われる」と批判した。ホワイトハウスは、機密情報を利用した取引を禁じる内部メモを配布した。政権内部でも、イラン攻撃に乗じた疑惑が無視できなくなっている。
疑惑を受け、米商品先物取引委員会(CFTC)が本格調査に乗り出した。ブルームバーグによると、CMEグループとインターコンチネンタル取引所(ICE)の両取引所に対し、各取引の執行者を特定できる識別コード「Tag 50」のデータ提出を要請済みだ。巨額の注文を出した「誰か」の身元を突き止めようとしている。
米ビジネスニュース専門局のCNBCが独占入手したSEC(米証券取引委員会)・CFTC(米商品先物取引委員会)宛の書簡で、民主党のサム・リッカルド下院議員はさらに踏み込んだ。原油やS&P500先物に見られる「巧みなタイミングの大口取引」が、証券取引法、商品取引所法、STOCK法(政府関係者の非公開情報取引を禁じる法律)に違反する疑いがあるというのだ。
同議員は原油先物だけでなく、政治・経済的事象の結果に賭けるオンライン市場「予測市場」や関税発表前の株式オプションでも同様の動きがあると警告している。
アメリカとイスラエルが仕掛けた、イラン攻撃。原油高に世界が苛まれる一方、当のアメリカに住む何者かが巨万の富を得た形だ。
