イラン産原油を調達する中国の偽装工作
世界が喫緊に必要としている原油が、こうして割安な価格で中国へ流れ込んでいる。備蓄される12億バレルの原油は、制裁下でいかにして輸入されてきたのか。
中国は、海上に張り巡らされた精巧な偽装ネットワークを駆使し、制裁下のイラン産原油を大量に調達してきた。
中国の税関記録上、2022年以降イランからの原油輸入はゼロ。だが2025年、「マレーシア産」と申告された輸入量は日量130万バレルにのぼると、エルサレム・ポストは伝える。おかしなことに、マレーシアの原油生産量の2倍超を輸入していることになる。
この矛盾を引き起こしているのが、「影の船団」だ。偽旗を掲げ、AIS発信器の位置情報を偽り、マレーシア沖で洋上積み替えを繰り返す手口で、イラン産原油をマレーシア産として数年にわたり輸入してきた。
ホルムズ海峡をめぐる攻防によって、石油の流れと同時に、国際通貨の力学にも変動が生じ始めた。
覇権通貨であるドルの切り崩しを、中国は長年狙ってきた。ホルムズ海峡封鎖による石油危機の今、同国はその攻勢を強めている。
その象徴となるのが、イラン当局の決済手段の変更だ。石油輸送の要衝であるホルムズ海峡の通航料を、人民元建てで徴収し始めた。カタール国営衛星テレビ局のアルジャジーラが報じた。
海運専門紙ロイズ・リストによれば、3月25日の時点で少なくとも2隻が支払いを完了。中国商務省もSNSの投稿でこの動きを事実上認めている。
ホルムズ海峡で存在感を増す「人民元」
石油取引を人民元で決済する「ペトロユアン(石油人民元)」について、イランの駐ジンバブエ大使館も4月初旬、「世界の石油市場に(人民元決済を)加える時が来た」とSNSで宣言した。
米ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授(IMF元チーフエコノミスト)は、「イランはアメリカに一矢報いつつ、米制裁を回避するとともに、BRICS諸国の貿易を元建てに移行させている同盟国・中国を取り込もうとしている」と分析する。
イラン側としては、元建て取引を通じて制裁を迂回し、貿易コストの削減が可能だ。これは中国にとっても、ドルの覇権を切り崩す足掛かりとなる。両国はこの海峡で、それぞれの思惑を一致させた。
習近平国家主席は2024年の幹部向け演説で、人民元が国際商取引の共通通貨となり「グローバルな準備通貨としての地位」を獲得するとの期待を語っていた。
ホルムズ海峡での人民元決済によって、中国はその構想を一歩、現実に近づけた。

