中国が割引価格で石油を買い集められるワケ
中国は制裁対象国の石油製品を密かに運ぶだけでなく、現在高騰中の原油価格でも漁夫の利を得ている。
以下の構図は、米下院の中国共産党に関する特別委員会が「Crude Intentions」と題した報告書で分析している内容を要約したものだ。タイトルは「原油の思惑」と「露骨な意図」がかかっている。
アメリカやその同盟国は、ロシア・イラン・ベネズエラに対し、タンカーや保険会社、銀行を標的に幾重もの制裁を科してきた。
こうして欧米企業が手を引いた結果、制裁下にある上記3国の原油は買い手を求めて中国に集中するようになった。
商品取引データを分析するケプラー社の2025年のデータを見れば、その集中ぶりは明らかだ。中国はロシア産を日量140万バレル、イラン産を85万バレル、ベネズエラ産を42万バレル輸入している。合計で260万バレルを超え、海上輸入の実に4分の1を制裁対象国からの原油で賄っている計算になる。
買い手が中国しかいなければ、中国が自然と価格決定の主導権を握る。同報告書によると、2024年だけで中国が恩恵を受けた割引の総額は、推計120億〜150億ドル(約1兆9000億〜2兆3000億円)にのぼる。
さらに2025年に入ると、中国は買い叩きの動きを強め、イラン産原油の購入価格を大幅に引き下げた。
国際原油価格の指標であるブレント原油との差額は当初1ドル(約157円。5月6日現在のレート、1ドル157.12円で換算、以下同)前後にすぎなかったが、最大10ドル(約1570円)にまで開いた。ベネズエラ産にいたっては最大21ドル(約3300円)安だ。
独裁政権を締め上げるはずの制裁によって、中国は圧倒的な価格決定権を手にした。
石油備蓄を減らす日本、増やす中国
割安な価格で流れ込む原油を背景に、中国は国家的な「保険」を強化している。有事に備えるための、大規模な石油備蓄だ。同報告書によるとその量は、今年3月時点で約12億バレル。海上輸入のおよそ109日分に相当し、過去最高を更新した。
かつて石油の純輸出国だった中国は、工業化の加速で1993年に純輸入国へ転じた。いまや原油の約70%を海外に頼る。
中国指導部はエネルギーの安全保障を「大国間競争における喫緊の課題」と位置づけてきた。習近平国家主席はこの認識を加速し、「最悪のシナリオ」に備えよ、エネルギーの「飯碗(生命線)」を他国に委ねるなと号令を発した。
2004年に「石油封鎖に耐える」目的で着工された重層的な備蓄システムの拡充を、中国はいま加速させている。中国共産党に関する特別委員会が推計した原油在庫量は、2021年末の約9億7900万バレルから、現在では約12億バレルへと増加している。3月26日から段階的に石油備蓄を放出し始めた日本に対し、中国は備蓄を増やしている構図だ。

