石油不足を回避する方法はあるのか。米メディアは、ホルムズ海峡を封鎖したイランだけが石油収入を確保し続けていると報じている。損をするのは世界経済だけという歪んだ構造が続く中、米シンクタンクが「海峡をさらに封鎖せよ」という逆転の発想を大真面目に論じている――。
2026年4月6日、テヘランのイマーム・ホメイニ病院外で行われた米国とイスラエルによる医療施設への攻撃を非難する集会にて、ルーホッラー・ホメイニ(左、1989年まで)、アリ・ハメネイ(右、2026年2月まで)、モジュタバ・ハメネイ(中央、現職)の横断幕
写真=AFP/時事通信フォト
2026年4月6日、テヘランのイマーム・ホメイニ病院外で行われた米国とイスラエルによる医療施設への攻撃を非難する集会にて、ルーホッラー・ホメイニ(左、1989年まで)、アリ・ハメネイ(右、2026年2月まで)、モジュタバ・ハメネイ(中央、現職)の横断幕

ロシア制裁時より長期化するおそれ

ホルムズ海峡は世界の石油が行き交う海の要衝(チョークポイント)だ。イランが事実上封鎖した今、同等の物流を確保できる迂回路はない。

国際エネルギー機関(IEA)はこれを「石油市場史上最大の供給途絶」であると述べ、すでに4億バレルの戦略石油備蓄の放出に踏み切った。だが、生産も輸送も物理的に止まっている以上、それだけでは到底足りない。原油価格はすでに2008年7月につけた史上最高値の1バレル=147ドル(約2万3500円、7日現在のレート)に迫りつつある。

日本にとって、これは対岸の火事ではない。原油輸入の約9割を中東に頼り、その大部分がホルムズ海峡を通る。3月上旬には150円/L前後で落ち着いていたガソリン価格は、一時180円/L台にまで上昇。今後の夏シーズンに向け、電気代への影響も懸念される。

今回の原油高は長期化のおそれがあると、カタール国営衛星テレビ局のアルジャジーラは指摘する。2022年の高騰とはメカニズムが異なるためだ。

2022年、ロシアのウクライナ侵攻後にも原油価格は1バレル139ドル(約2万2200円)に急騰した。ロシアへの制裁を受けてのものだ。だが、西側はプライスキャップ(価格上限)を設けた上で輸入を続けた。原油価格は翌年には、ほぼ侵攻前の水準に落ち着いている。

一方、チョークポイントを掌握された今回の高騰は、輸出量自体が極端に絞られている。長引くおそれがあるとアルジャジーラは論じる。

従来の石油ショックとは異質

今回の危機は、過去の石油ショックと比べても異質だ。

アメリカのダラス連邦準備銀行は、これまでの地政学的原因による供給途絶のケースでは、いずれも規模が限定的だったと指摘する。1973年の第四次中東戦争や1990年の湾岸戦争で失われたのは、世界供給の約6%。1979年のイラン革命でも約4%にとどまる。

しかもそのどれ一つとして、完全な供給遮断には至っていない。1979年に原油価格が急騰したのは革命後の警戒感が主因であり、1990年に懸念されたペルシャ湾の掌握も、結局は起きなかった。かつての石油ショックは、いずれも結果としては「最悪の事態」を免れている。

対する今回は、ホルムズ海峡が史上初めてほぼ完全に封鎖された。世界供給の約20%が一気に消えた。過去の危機のパーセンテージの3〜5倍に相当する。

ホルムズ海峡の封鎖と前後して、サウジアラビアやアラブ首長国連邦など周辺国の石油インフラも攻撃を受けた。さらに、輸出の道を断たれた湾岸諸国は、貯蔵施設が満杯に近づくにつれ、油井の閉鎖を迫られた。石油をくみ上げても、もはや行き場がないからだ。イラクやクウェートを皮切りに、3月上旬から各国が相次いで減産に踏み切っている。