「長期戦」に賭けるイラン
封鎖解除は、時間との闘いでもある。封鎖が長引くほど、世界経済の傷は深くなる。そしてイランはそれを知っている。
ダラス連邦準備銀行が3月に公表したモデル分析によると、世界の石油供給の約20%が途絶した場合、わずか1四半期で原油価格の代表的な国際指標であるWTI原油は1バレル98ドル(約1万5700円)に跳ね上がり、世界の実質GDP成長率は年率2.9ポイント沈む。仮にそこで封鎖が解けても、2026年末時点の実質GDPは封鎖前を0.2%下回ったまま戻らない。
もし封鎖が2四半期続けば、原油は115ドル(約1万8400円)、成長率がプラスに転じるのは第4四半期以降と予測されている。3四半期に及べば原油は132ドル(約2万1100円)、年間GDP成長率は1.3ポイント削られる。しかもこの試算は、天然ガスや肥料の輸出途絶を織り込んでおらず、実際の影響はさらに大きくなるとみられる。
こうした時間的コストを、イランはしたたかに利用しようとしている。ワシントン近東政策研究所によれば、イランは意図的に「長期戦」を選んでいる可能性があるという。相手のほうが先に音を上げる、という読みだ。石油相場が上昇すれば、イランにとって不利にはならない。
そうしているうちにも、実体経済は蝕まれていく。アルジャジーラが指摘するとおり、石油化学・肥料・鉄鋼といったエネルギー集約型の産業が真っ先に苦しくなり、航空・海運の運賃が上がるにつれて家計の可処分所得も減少するおそれがある。一連の動きを通じ、湾岸協力会議(GCC)諸国が長年かけて築いた「信頼できる供給者」としての地位も揺らぎつつある。
イランだけが個別取引で石油の供給を実質的に支配している現状、輸出路を断つ「全員に開放か、さもなくば全員に閉鎖か」の戦略は的を射ているのかもしれない。停戦交渉の兆候も報じられるが、交戦と海峡封鎖が長引くシナリオも依然存在する。アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃は世界に波紋を広げており、一刻も早い幕引きが望まれる。


