スーパー不況のなか来店客数を伸ばす「ライフ」
物価高、節約志向、そして人手不足――。スーパーマーケット業界を取り巻く逆風が強まるなか、ライフコーポレーションの業績が好調である。2025年2月期は営業収益8504億円(前年比5.0%増)、当期純利益179億4800万円(同6.0%増)と、いずれも過去最高水準を更新した。中でも注目は「客数」が1.4%増と堅調に伸びている点だ。インフレ局面では客単価頼みの業績が多い中で、来店客数の増加は企業の実力を示す指標でもある。
会社予想は8850億円だが、市場関係者の一部には、9000億円の大台突破も視野に入ってきたとの見方もある。さらに「2030年度に1兆円」という目標を「1~2年前倒しもありうる」(岩崎高治社長)状況だ。
現在、フジ(2024年にマックスバリュ西日本と経営統合し、新生フジとしてスタート)やユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH、マルエツやカスミ)といったイオングループの2社も営業収益で8000億円台に迫っており、しのぎを削る構図となっている。とはいえ、首都圏と近畿圏を地盤とするライフは合併をせずに単独で成長し続け、8500億円を超えて首位に立つ。統合によるグループ体制ではなく、単独の経営基盤でこれを実現している点は特筆に値する。
「平均点のスーパー」はどう変わったのか?
10数年前、「平均点のスーパー」とも言われたライフは、今では“優等生”の高付加価値型スーパーとして強い存在感を放つ。その進化を支えているのは、プライベートブランド(PB)の戦略転換、都市戦略の妙といった戦略面の革新に加え、それを確実に実行に移している“現場力”の背後には、トップのリーダーシップと一貫したビジョンがある。
ライフの飛躍を語る上でまず外せないのが、岩崎高治社長が掲げる「同質化競争からの脱却」という戦略だ。
「どこに行っても同じような品揃え」「価格でしか差がつかない」――そんな“コモディティ化”に沈むスーパー業界にあって、ライフは明確な価値の違いを打ち出す道を選んだ。
その象徴が、自然派・健康志向のPB「BIO-RAL(ビオラル)」だ。2025年2月期のPB売上高は約800億円、そのうちビオラルは前年比30%増の約90億円を記録した。