80代の社長とはもはや「妖怪」のレベル

「コンビニの神様」と呼ばれてきたセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長兼最高経営責任者が、突然、退任することになりました。

背景には、中核子会社セブン-イレブン・ジャパンの社長人事をめぐる対立があります。鈴木会長は井阪隆一社長の退任を求めていましたが、取締役会で否決されたのです。

自身の退任を発表した4月7日の記者会見では、鈴木会長を含む4人が登壇しました。最年少は72歳の村田紀敏セブン&アイ社長。最年長は83歳の鈴木会長で、81歳の後藤光男顧問、77歳の佐藤信武顧問と続きます。ちなみに退任を求められた井阪社長は58歳です。

この記者会見をみて、「高齢の経営者は企業経営にマイナス」と受け止めた人も少なくないようですが、データを調べてみると、意外な事実がわかりました。

時価総額2500億円以上の上場企業のうち、80歳以上の会長・社長は12社13人います。東証株価指数(TOPIX)と12社の時価総額を加重平均した「超ベテラン社長インデックス」を2005年末から月次で比較してみると、そのパフォーマンスは一度もTOPIXを下回らず、05年末を100とすると今年3月末時点のパフォーマンスは197.2でした。

「超ベテラン社長インデックス」の構成銘柄

経営者の年齢別に企業の収益率を調べても、同じことがいえます。経営者が80代以上の企業は収益率が最も高く、最も低いのは社長適齢期といえる50~60代。一方、40代以下は、若いほどパフォーマンスが上がります。つまり年齢別のグラフはU字カーブを描くのです。

超ベテラン社長のパフォーマンスが高いのはなぜでしょうか。

ひとつの理由は「残存者効果」です。特別な生命力や経験値がなければ、80代になっても経営者を続けることは困難です。尊敬の意を込めていえば、“妖怪”レベルの人たちなのです。逆説的ですが、そのレベルに達しない経営者は50~60代までに淘汰されるのでしょう。

もうひとつの理由は、多くが創業者であることです。最も効率的な経営は、天才による独裁です。多くの創業者は大株主ですから、「雇われ社長」に比べ、大きな裁量権をもち、迅速で大胆な意思決定ができます。「読み」が当たっていれば、これほど強い体制はないでしょう。

典型的な例が、自動車会社スズキの鈴木修会長兼CEOです。フォルクスワーゲン(VW)の排気ガス不正問題が発覚する約1カ月前に提携を解消し、VWの保有株を買い戻していました。事前に危機を回避した鈴木会長の手腕は、天才的といわざるを得ません。超ベテラン社長ならではのひらめきとそれを実行できる体制による離れ業でした。