2016年3月期の最終決算で、三井物産、三菱商事といった商社大手が相次いで初の最終赤字へ転落した。その主たる要因は資源価格の暴落だ。
資源ビジネスはピーク時の12年、三菱商事、住友商事、三井物産、丸紅、伊藤忠商事の大手5社で連結純利益1兆円を超えていた。それが、15年度は赤字となる見込み。三菱、三井が参画したチリの銅鉱山開発は高値掴みで失敗した投資の典型で、2社合計で3700億円の減損を迫られた。
そんな状況で商社大手は資源部門の業績悪化を食料品や化学品、機械といった非資源部門の利益を伸ばすことで補てんしてきた。しかし、中国の景気悪化や、タイなど新興国での需要減の影響を受け、非資源部門の利益も鈍化してきている。
そんな中、伊藤忠は16年3月期で過去最高益を記録し、初めて業界首位に立つ見通しだ。これは、得意とするマーケットの違いが大きい。まず「非資源ナンバーワン商社」を掲げ、資源部門への依存度が相対的に低く、資源価格下落の影響が限定的だった。加えて、現在の世界景気は新興国が総じて悪く、米国、ついで日本が好調だが、伊藤忠は新興国より米国や国内での利益が大きい。経営戦略というより、大きな減損を出さなかったという、消極的理由による独り勝ちとも言える。
商社復活のための打てる手立ては、まずは我慢だ。現在の資源安はいつまでも続くわけではなく、既にシェールガスなどの供給はかなり落ちている。現在1バレル30ドル台後半で推移している原油価格だが、今年後半には持ち直す可能性もあろうが、現時点では、市況回復を待つ以外にはない。
その後はそれぞれ知見や専門性のある分野に投資を絞ること。強みを活かした投資という原点に戻ることが業績回復の何よりの近道だろう。
(衣谷 康=構成)