海外で稼ぐ割合が増えた日本企業は、目まぐるしく変化する世界情勢の影響をまともに受けるようになっている。いっときの成功に酔いしれている暇はない。2015年、新しくトップに就任した男たちはどんな戦いを挑むのか。

非資源分野、輸送システム事業を強化

社内序列で32人抜きという異例の抜擢を受け、三井物産史上最年少で社長に就任。石油、鉄鉱石などの資源価格急落で商社には逆風が吹くなか、収益基盤の主軸を資源分野に置いてきた同社も2015年3月期決算では減収減益に。非資源分野の強化という課題を抱え、多難の船出からどのように舵をきっていくのか。

――今年1月に新社長就任を打診されたときの思いは?
三井物産社長 安永竜夫氏

【安永】何の準備もしていなかったので心底驚いた。しかし託された以上は、社長職をきっちり務めようと思い、その場で腹を括った。自分が選ばれた理由はいろいろあるだろうが、最大のポイントは若返りだ。商社のビジネスは今、トップ同士が直に話し合って合意する機会が圧倒的に増えている。1年の半分は海外に赴き、時差ボケをものともせずに議論や交渉をするには体力が必要だ。

――社内ではエネルギーのプラント部門での勤務が長かった。

【安永】資源プラントの建設現場は大体が砂漠かジャングルかツンドラだ。そんな過酷な地域に出かけていって、ハードな交渉をしてきた。いい経験をしたと思うのは、30代後半でプロジェクトリーダーを務めた「黒海横断パイプラインプロジェクト」だ。交渉が長引き、疲れとストレスで痛風の発作が出て、足を引きずりながら交渉のテーブルに着いたことも。でも交渉相手からは「早く帰りたいからそんな(足を引きずる)格好をしているのか」と非難された。海外ビジネスは戦いだと痛感したが、同時に商社マンとしてのプロ意識も養えたと思う。

――資源価格が急落し、減益となったタイミングでの船出だ。

【安永】収益基盤が資源エネルギーに偏ってきたことは否めない。だからこそ危機感を持ち、非資源の収益力を強化していく。ただし、資源価格はサイクルで動いているので、今の動きに一喜一憂しても仕方なく、中長期的視点で取り組むのが重要。とはいえ下降局面でも収益が出るよう、コスト削減などの努力はしていく。