施行まで期限が迫る「TikTok禁止法」
米国では「来年1月からTikTokを利用できないかも?」と心配する声が聞かれる。バイデン政権の最終日、1月19日に「TikTok禁止法」の施行が予定されているからだ。
欧州でも、TikTokの運営会社に欧州委員会の調査が入ると報道された。いま世界のTikTokで何が起きているのか。今回は米国を中心にTikTok問題を取り上げたい。
まずは米国の「TikTok禁止法」について、これまでの経緯を詳しく説明しよう。
今年4月、連邦議会上院でTikTokのサービスを規制する法案が賛成多数で可決、ジョー・バイデン大統領が署名して新法が成立した。正式には「アメリカ国民を外国敵対勢力管理アプリケーションから保護する法律(Protecting Americans from Foreign Adversary Controlled Applications Act)」という。規制の対象は、中国など敵対国に本社がある企業などが運営するアプリ。条文で「TikTok」と親会社の中国企業「バイトダンス」が名指しされたことから「TikTok禁止法」「TikTok規制法」と呼ばれている。TikTok問題は実際のリスクとは別に、米中間でつづくテクノロジー覇権争いの象徴でもあるからだ。
新法では、国民の多くがTikTokを利用すると、米国の国家安全保障(National Security)が脅かされるとしている。
米国が懸念する「3つのリスク」
懸念されるリスクは主に次の3つ。
① 個人データの収集
利用者のデータ(位置データ、検索データ、動画視聴データなど)が収集される。
② 世論操作の懸念
アルゴリズムによる影響力(世論操作、選挙への介入など)がある。
③ 中国政府の情報利用
中国政府が不当にTikTokのデータを利用するおそれがある。
中国では国家情報法、サイバーセキュリティー法などによって、個人や企業が政府に情報提供を要請されると協力する義務がある。TikTokが米国人のデータを取得している状況は、中国の脅威を増大させるというのである。
「TikTok禁止法」は、成立後270日以内に、バイトダンスが米国企業などの第三者に米国TikTokの事業を売却しなければ、同アプリ・サービスの禁止措置がとられる。成立後270日の期日にあたるのが来年1月19日、ドナルド・トランプ次期大統領の就任前日だ。