チームを日本一に導いた「日本一オーラのない監督」
スポーツでも、ビジネスでも、生身の現場に立つリーダーとは過酷なポストである。チームを、組織を、どう強くするのか。
ここに一つの成功例がある。早稲田大学ラグビー部の中竹竜二監督は新たな価値基準、「フォロワーシップ」にこだわり、チームを2年連続大学日本一に導いた。
2009年1月10日。晴天の東京・国立競技場。大学決勝戦で帝京大を破ったあと、中竹監督は豊田将万主将ら約130の部員と肩を組み、早稲田の凱歌「荒ぶる」を大声で歌った。
35歳の中竹監督は泣いた。
「昨年の倍苦労した分、今年は倍うれしい。最後まで豊田たち学生を信じてよかった」“荒ぶる”とは、大学日本一を勝ち取ったときにしか歌うことが許されない部歌である。創部90周年。景気の好不況のごとく、チーム状態がよくても悪くても、早稲田は常にこの“荒ぶる”をめざす。
「僕はそこにいる人たちが、何がもっとも力を発揮するのかを突き詰めていく。それぞれの組織にとって何が一番大事かというと、ゴールは何かということでしょ。会社だったら、利益だったり、社会貢献だったり、自己実現だったりするでしょう。早稲田だったら、勝利です。ゴールは“荒ぶる”です」
もちろんゴールは同じでも、その年の戦力、環境によってプロセスがちがってくる。名門チームをカリスマ監督の清宮克幸(現サントリーラグビー部監督)から引き継いだ自称「日本一オーラのない監督」は、チームの価値基準をがらりと変えた。
それが「フォロワーシップ」である。おれについてこい、の清宮流のリーダーシップとは異なる。中竹監督は説明する。