「組織の中ではリーダーとフォロワーに分かれます。圧倒的にフォロワーの人数が多いでしょ。だったらフォロワーでも組織を変えることができるじゃないかというのが論理の肝です。いかにフォロワーが組織の中で成長し、組織に貢献できるのかということを考えることです。フォロワーシップがしっかりしていれば、だれがリーダーであっても組織は機能し、進化し続けます」

例えば、こんなことがあった。

年末、大学選手権の準々決勝の筑波大戦で勝ったけれど拙い試合をした。翌日のミーティングで、中竹監督は学生を叱咤した。「発言と構えを変えろ!」と。

「チームにプラスアルファが生まれるとしたら何かと考えた。一つひとつの発言を大事にして、責任を持ったらもっといいんじゃないか、と思った。構えは、試合に対する心構え、タックルの構えなどプレー上の姿勢です。構えを変えたら発言も変わるし、発言を変えたら構えも変わる。全部が変わっていくんです」

つまりは有言実行たれ、ということだ。すると、学生たちは話し合いを自主的に開き、翌朝、中竹監督の机に“決意文”を置いたのだった。〈一発で仕留めるタックル・鋭い動き出し・ディフェンスでのノミネート〉。準決勝はこれに懸けます、と。

中竹監督は学生の成長を認める。

「あのときはすごくうれしかったですね。フォロワーのありようという意味では、格段に成長しています。発言や構えなど、ちょっとした変化で、物事の流れが変わっていく。僕にはこれまでの経験値があります。これはコーチングとしてのテクニックです。精神論ではなく、こまかいスキルです」

中竹監督は「エリート」ではない。福岡・東筑高校を卒業後、地元の福岡大に進んだ。でも、東京への思いは断ち難く、翌年、早稲田に合格した。ラグビー部ではケガもあって、3年生まで公式戦には出場できなかったが、信望厚く、統率力があったから、キャプテンに選ばれた。一軍経験なしの主将就任など、早大ラグビー史で前代未聞のことだった。