「従業員満足と顧客満足はイコール」と明言し、迷うことなく「情」と「信頼」重視の経営を推進する理美容チェーン「オオクシ」の大串哲史社長は異色の経営者だ。現在、千葉県を中心に6業態39店舗を展開、12期連続2ケタ成長の躍進ぶりである。

顧客のリピート率は驚異の80%以上

千葉県を中心にカットサロンなど理美容室のチェーン展開を行っているオオクシ社長の大串哲史(46歳)は、やんちゃ坊主のような風貌ながら、これほど人に対して気の細やかな人物はいない。

千葉県を中心に6業態39店舗を展開する理美容チェーン「オオクシ」の大串哲史社長。

「従業員に信頼してもらうにはここまでやるのかというほど私や会社の全てをさらけ出しています。“信”が全ての元。従業員に信用してもらうためのエネルギーが一番大きい」と大串は語る。

財務状況がガラス張りなのは当然のこと、店舗ごとの利益や月1回の経営会議の議事録も全て公開。公開後、各店舗の従業員と議事録の読み合わせを行い、会社の問題を共有して、解決策も話し合っている。事業計画書も金融機関のためではなく、従業員のために作り、みんなで内容を共有しながら書き上げていき、パートも含めて全員に配る。事業報告も資金の使い方を全て明記、成果も伝える。大串の経営判断のミスがあれば、従業員は一目瞭然だ。

オオクシは現在、6業態39店舗を運営している。うち30店舗を占める「カットオンリークラブ」は1550円ほどの低料金で、性別や年齢を問わずに髪をカットするサロンだ。カット中心のトータルビューティーサロン「カットビースタイル」が4店、ファミリー向けの「カットスタイルクラブ」2店、他にヘッドスパの店と総合理容店が各1店舗ある。

売上は2014年度で12期連続の2ケタ成長を果たしている。驚くべきは顧客のリターン(再来店)率である。6年連続で80%を超え、最も高い店では95%にも達する。70%を超えれば成功といわれる業界にあって、極めて高いリターン率を誇る。

理美容業界では常識の「指名ノルマ」もない。社員同士がライバルになると技術や情報の共有がしにくくなると指名制を重視しない。つまり、特定のスター美容師を頼るのではなく、店舗というチーム自体が顧客から高い支持を得ているのである。