誰でも簡単に印刷するように立体造形ができる3Dプリンターの普及が始まったが、横浜市に本社を置くJMCは他社に先駆けて2000年から光造形の成型サービスを開始、現在は3Dプリンターを含めた樹脂の立体成型専門企業として高い評価を受けてる。

出る杭を恐れず、群れず、依存せず

渡邊大知・JMC社長。

横浜市に成長盛りの中小企業がある。JMCは「孤高の悪名」の標語を掲げ、「出る杭になることを恐れず、群れず、依存せず、信念を貫き、孤高の存在になる」と、とんがったメッセージを発し、製造業のイメージを覆すと主張する。

社長の渡邊大知(40歳)は、「日本の中小企業経営者は、いくらでも仕事があるのに、働いていないような気がする。社長がもっと働けば、日本の製造業は海外でも勝てる。円高だ、円安だと、いちいち意気消沈しているのは分かりませんね」と突き放す。

JMCは樹脂を薄く積み上げて造形する「3Dプリンター」を使った立体成型の専門企業である。また、アルミニウムやマグネシウムなど非鉄金属の鋳造もおこなっている。

同社が最初に光造形装置を導入したのが、2000年と、国内でも先駆けと言える早い時期だった。光造形は紫外線レーザを当てながら樹脂を一層ずつ硬化させて積層する工法だ。その後、プリンタヘッドから樹脂を吐出して紫外線ランプで硬化、積層する3Dプリンターという呼び方が一般的となった。材料にはアクリル系樹脂や石膏粉末、ナイロン粉末などが使用される。

JMCは、光造形と鋳造を組み合わせた「Q-TAC(光造形焼失鋳造法)」という技術を3年かけて開発し、2006年に特許出願している。これは、木型の代わりに光造形で型を作り、砂型に埋めて、高温で型を焼失させてから金属を流し込む工法だ。木型作成が不要になるので、納期を短縮できる。

JMCの取引先は、自動車の外装・内装品メーカーが最も多く、その他は歯科、時計・宝飾、文具、パソコン、携帯電話、プリンター、メガネなど多岐に渡る。3Dプリンターで試作してから、アルミなどの鋳造を依頼する取引先が多いという。順調に取引先は拡大しており、多くはホームページを通じた注文だ。

渡邊は3Dプリンターを知り尽くしているだけに、「新たな産業革命が起きる」といった過剰な期待や騒ぎは冷静に見ている。

「3Dプリンターブームは誤解のかたまりです。夢のツールという人もいますが、思い通りの形を素早く作ることはできるが、加工精度が低い。これで精密部品など作ることは不可能です」

3Dプリンターは高性能でも精度は100mmに対して±0.15mm。精密切削加工は、マイクロメートル(0.001mm)単位で精度を求められるだけに、その差は大きい。

そのため、精密な試作品づくりに使われるのではなく、ラフスケッチやポンチ絵から形を起こしたり、最終製品の形状や部品の組み合わせ状態の確認、あるいは少量多品種の工業生産用に使われている。