365日休まず注文を受け、即納する

立体成型そのものは、市販の3Dプリンター装置を買えば誰でもできるが、JMCの強みは圧倒的なスピードとサービス体制である。昼夜2交代制で、365日休まず注文を受け付ける。金曜日の夜や土曜日に受注しても月曜日には納品するという早さだ。注文の大半が、当日あるいは翌日出荷である。見積もりも1時間以内に回答する。

鋳造による自動車のヘッドカバー。

注文量や金額でサービスに差は付けず、同じ納品スピードと品質で届ける。高額の取引でも値引きは一切しない。価格は相場より2~3割安く、納期は倍以上のスピードのため、注文のリピート率は8割を超える。経常利益は製造業としては高く、十数%にも達する。

こうした体制を実現しているのが、業務プロセスの分散化と社員の多能工化である。JMCでは業務を細かく分けて、担当者に割り振り、生産効率を上げている。

例えば、見積もり依頼のメールが入ると、その返事を書く作業と、見積額を算出する作業、見積書を作成する作業をそれぞれ別の社員が同時に処理するので、1時間以内に回答できるのだ。1つの業務を1人に完結させず、仕事を属人化しないのが渡邊の方針である。

「この仕事はAさんしかできないとなると、それがステータス化して、Aさんは人に技術やノウハウを教えず、地位を守ろうとする。人によって品質が違う職人仕事では困るのです。安定して平均化された品質や納期を確保するために分散処理にしました」

同社では頻繁にジョブローテーションが行われ、営業、製造、経理など誰でも複数の業務を担当できるように教育している。新しい分野の仕事を次々と任されるため、社員はいつも「慣れない」「落ち着かない」状態にあり、それが社員を活性化すると渡邊は考えている。

JMCは、2012年から医療分野に進出した。3Dプリンターで臓器や血管、骨などを再現した樹脂モデルを母型として、シリコーン製モデルや人体の組織に近い感触を持つ樹脂材料モデルを作るサービスである。心臓や複雑な血管などを再現し、手術や治療の練習用として利用されている。

これほど高品質の臓器モデルは他になく、海外からも注目され、すでにフランス、シンガポール、韓国などに輸出されている。

また、iPS細胞などを用いた立体組織や臓器を3Dプリンター技術を応用して開発するプロジェクト(新エネルギー・産業技術総合開発機構=NEDO主催)にも参加し、再生医療製品の実用化を目指している。