現在、注目を集めている3Dプリンター技術だが、国内でいち早く鋳造用砂型に導入したのが小田原市に本社を置くコイワイである。従業員70人強ながら、社運をかけた最新技術の導入で鋳造品の納期を従来の5分の1~7分の1に短縮するという離れ業をやってのけた。

自動車部品づくりに強み

3Dプリンター関連市場は2020年には世界で11.7兆円に達する(経済産業省試算)という。現在、国内外で話題となっている3Dプリンターだが、日本で騒がれるずっと以前の2007年からこの技術を鋳造に活用してきた中小企業がある。

小岩井豊己・コイワイ社長。

小田原市に本社を置くコイワイだ。同社は従業員72人、一見したところ、どこにでもありそうな鋳物屋さんだが、中身は全く違う。

本社には、砂にまみれた工場の光景はなく、3Dプリンター技術を活用して砂型を作る最新鋭の装置が清潔感あふれる工場内に設置され、自動車のターボチャージャーなど複雑な形状のエンジン部品の砂型が自動的に浮かび上がってくる。まるで未来の工場を見ているかのようだ。

同社社長の小岩井豊己(61歳)は「会社の命運をかけてドイツから3D装置を導入したが、失敗していたら今頃、生き残ってはいなかったでしょう」と語る。

コイワイは精密鋳造の試作と量産、および金型製作を営む企業である。試作が売り上げの6割ほどを占めており、その内容も高度な精密部品だ。多くの大手メーカーと取引し、製品の設計段階から関わって試作品を作る。

自動車の各種部品、特にエンジン部品に強く、国内ほとんどの自動車および部品メーカーと取引している。量産品では自動車のターボチャージャー、水上バイクの各種部品、船舶用船外機などを扱う。

海外展開も進んでおり、韓国やインドのメーカーと取引している。インドのタタ・グループからは自動車のエンジン試作を請け負っており、2012年にはバンガロールにKOIWAI INDIAという現地法人を設立、将来的にはインド工場の建設も検討している。

経済産業省では砂型を作る3Dプリンター装置の国産化を目指して2013年度から「超精密三次元造形システム技術開発プロジェクト」を開始した。鋳造業の産業競争力を強化するため、2018年までに現在の造形速度の10倍(将来的には100倍)で、鋳造品の肉薄化によって50%軽量化できる技術を確立するとしている。

このプロジェクトには大手メーカーが参加しているが、その中でメンバーであるコイワイは実際に装置を使っているユーザとして重要な役割を担っている。小岩井も情熱を持ってプロジェクトに参加している。