電子応用機器の受託開発事業がITバブル崩壊で海外流出し、新たに取り組んだのが、それこそ畑違いのLED照明を使った野菜栽培システムだった。創業者の岡崎聖一は自ら植物生理学や遺伝子工学を研究し、独自に開発したLED菜園システムは栽培効率の高さから評価されるようになった。

新横浜で生まれたおいしい「ハイカラ野菜」

新横浜駅近くのオフィス街にレタスなどグリーンリーフを月約1万5000株も生産できる“農場”がある。

岡崎聖一・キーストーンテクノロジー社長。

「新横浜LED菜園」は、LED照明を使った植物栽培ユニットを22坪のスペースに設置した植物工場である。地元の建設会社である奈良建設の本社ビル4階にあり、植物工場システムの総販売代理店である株式会社アグリ王と共同で運営している。その生産能力は畑に換算して約1000坪に相当する。

システムを開発したキーストーンテクノロジー(以下、キーストーン)は、「AGRI Oh!(アグリ王)」というLED栽培ユニットを独自に開発、新横浜LED菜園にはこのユニットを5段積み重ねたシステムが12台導入されている。ユニットは水耕栽培の水循環やLEDタイマー設定などが自動化されており、経験がなくても操作できる。作物の収穫や植え付けは軽作業であり、マニュアル化すれば、高齢社や障がい者でも扱うことが可能だ。

新横浜LED菜園など都市の建物内で栽培された葉物野菜を、キーストーンは「ハイカラ野菜」と名付け、販売している。2014年7月には松屋銀座本店や西武池袋本店などデパートでも販売を始めた。

農薬などを一切使用せず、水を循環利用して栽培できる。露地物に比べて植物工場の野菜は栄養素や味が劣るというイメージがあるが、キーストーンでハイカラ野菜のレタスを分析した結果、ベータカロテンの含有量は露地物の1.5倍、濃厚感やコクも高く、ブラインドティスティング試験でもハイカラ野菜のおいしさが証明されている。

社長の岡崎聖一(50歳)はこう語る。

「露地物やハウス栽培のレタスは収穫量などによって価格が大きく変動し、生産量が減ると値が高くて、味が落ちる。植物工場では年間を通じて価格と品質が変わらず、しかも安全な野菜を提供できる。年間を通じれば価格は安いぐらいですよ」