大手家電メーカーが軒並み苦戦を強いられている中、ごくごく小規模なメーカーが元気だ。なぜ彼らは少人数で革新的な製品を生み出し、ヒットにつなげることができたのか。その秘密に迫る。
たった一人で設計から組み立てまで
大手メーカーの富士フイルムを退職し、家電ベンチャーを立ち上げたのがBsize(ビーサイズ)の八木啓太氏である。
同社の第1号製品は、ネジや継ぎ目のない1本のパイプを折り曲げてデザインした、極めてシンプルなLEDデスクライト「STROKE」。グッドデザイン賞を受賞したこの製品を発売した当時、同社は八木氏の1人体制で「ひとり家電メーカー」と話題になった。
「最初は自宅の一室を組み立て工場にし、部品を発注して部屋に集め、注文が入るごとに私が組み立て出荷していました」(八木氏)
さすがに現在は組み立てを外注しているものの、39900円のSTROKEを累計で約3000台販売し、第2弾の製品であるスマホの置くだけ充電器「REST」が発売されたいまも、社員数は4人である。
Bsizeは企画や開発、設計を自社で行い、製造は国内の協力企業に依頼し、販売はネット通販で行うことで、少人数での革新的なモノづくりを実現している。
八木氏は高校時代にアップルのiMacに影響を受けてモノづくりを志し、大学で電子工学、独学でデザインを学び、富士フイルムに就職して機械工学を習得した。そして11年に起業。そのきっかけの一つは、モノづくりの環境変化にあった。
「就職した当時は、開発環境が一気にデジタル化する時期でした。当初は個人で使えるようなものではなかったのですが、急激に個人向けの普及が進み、以前は1000万円くらいしたCADソフトが独立時には10万円で買えるようになった。この流れをうまく活用すれば、大手メーカーの開発環境と同じようなことが個人でもできると思いました」