開発途上国の貧しい人々を支援しながらビジネスを展開する新しい考え方である「BOPビジネス」の先駆的企業が日本ポリグルだ。創業者で会長の小田兼利は納豆菌などのネバネバ成分から優れた水質浄化剤を開発し、それを安く開発途上国で販売することで安全な水を提供する。

注目される低所得者層向けのBOPビジネス

日本の中小企業が今後生き残るために避けることのできない課題が海外進出だ。先進国市場で高く評価されている中小企業も多いが、いま注目されているのが開発途上国のマーケットを対象としたビジネスだ。

小田兼利・日本ポリグル会長は海外を飛び回っている。

悪徳企業のように貧しい人たちから搾取しようというわけではない。所得の低い人たちを対象に、広く薄く利益を得ながら持続可能なビジネスとして展開し、現地の生活向上や貧困の解決に役立つ事業を「BOPビジネス」と呼ぶ。

BOPとは、「Base Of the economic Pyramid」の略で、「経済ピラミッドの土台」、すなわち低所得者層を指す。

世界の所得層で、1人当たりの年間所得が2万ドル(2014年10月27日のレートで214万円)を超える人々は世界人口でたった3%しかない。実に72%が年間所得3000ドル未満(同32万1000円)の低所得者層である。

この層の総人口は約40億人に達し、1人ひとりの所得が少ないとはいえ、全体の市場規模は5兆ドルと、日本の実質GDP(国民総生産)に近い。

新興国では、こうした低所得者層も将来的に中間所得層に成長する可能性もあり、次世代の市場を期待した息の長い取り組みがBOPビジネスとも言える。

JETRO(日本貿易振興機構)の試算では、新興国において年間所得5000ドル未満の低所得層は2009年で約70%を占めているが、2020年には約30%まで低下すると予想している。言い換えれば、所得5000~3万5000ドルの中間層が約60%にまで拡大し、その人口は20億人に達することになる。