世界40カ国に水質浄化材を販売

欧米の多国籍企業は、BOPなどという言葉が生まれるはるか前から、着々とこうしたビジネスに取り組んでいる。日本企業の一部も行っているが、いずれも大手企業だ。

そうした中で、「日本の中小企業こそBOPビジネスの中核的なプレーヤーになれる」と主張し続けているのが、日本ポリグル会長の小田兼利(73歳)である。

「欧米企業と違って、日本の中小企業は現地の目線で仕事ができ、その技術力、勤勉さ、優しさは開発途上国を救えるし、同時に日本の将来にもプラスになります」と小田は力強く語る。

日本ポリグルは、小田自身が開発した水質浄化剤をアジア、中南米、アフリカなど飲料水に困っている地域で安く販売し、現地の人々から感謝されている。小田は現地に行くと、父親のように慕われている。

「PGα21Ca」という水質浄化剤は、納豆菌などのネバネバ成分であるポリグルタミン酸にカルシウム化合物などを混合して出来ている。たった1グラムで10リットルの水を浄化できる。

わずかな白い粉を河川や沼・池などから採取した水に入れると、水中のゴミや大腸菌などの雑菌、重金属などの有害物質を瞬時に凝集し、沈殿させる。この上澄みを煮沸すれば飲み水として利用できる。

原料は天然由来のもので無害だが、殺菌作用はないため浄化剤で処理した後、砂の濾過、塩素殺菌の3つのタンクを組み合わせた簡易な浄化装置を設置して安全性を高めている。

タンザニアではODA(政府開発援助)事業として7カ所で給水事業を行っている。日量100トンを給水する浄化装置の回りには自然と屋台の食堂や日用品の店などが開かれるようになり、「ミニ道の駅」が生まれている。

日本ポリグルはメキシコ、シンガポール、コロンビア、バングラデシュなどに現地法人を持ち、世界40カ国に製品を輸出、売上の4割が海外だ。

PGα21Caは工場の排水処理や、汚れた湖沼・河川の浄化用としても使われており、優れた効果を上げている。