現地では日本ブランドへの信頼が厚い
なぜ、小田はここまで海外ビジネスにこだわるのか。工学博士号を持つ小田は大学卒業後、ダイキン工業に勤めた後、独立して起業、オートロックなどの発明もした。
その後、紆余曲折を経て、1995年の阪神・淡路大震災に遭遇。被災者が飲み水に困る光景を見て、濁った池の水を飲み水に変える浄化剤の開発に取り組んだ。
ポリグルタミン酸が浄化作用を持つことは知られていたが、問題は生産コストの高さだった。小田はネバネバ成分を大量に作る納豆菌の株栽培に成功し、98年にPGα21Caを売り出した。
だが、国内では全く相手にされず、苦しんでいるときに、2004年のスマトラ沖地震が発生した。日本ポリグルにいたタイ人社員を通じて、タイ政府から飲み水を確保するためにPGα21Caを送ってほしいと要請を受け、無償で提供した。これが高く評価された。
07年にはバングラデシュをサイクロンが襲い、多くの死者と被災者が出た。現地からの要請でPGα21Caを送ると、その効果に驚いた現地から購入したいと注文が入った。だが、むやみに卸せば、高い価格で販売され、貧しい人たちの手に届かなくなるのではないかと小田は懸念し、自ら現地を訪れた。これが全ての始まりだったのだ。
その後、日本ポリグルは一部の役員・社員の造反から7億円近くも損失を出し、経営危機に陥った。小田は自殺も考えるほど追いつめられたが、バングラデシュなどで親しくなった人たちへの思いから踏ん張り、さらに海外ビジネスを加速させていった。
「現地では私たちが思うより日本ブランドへの信頼が厚い。だから、中小企業の経営者はどんどん途上国へ出て行くべきです。日本人なら、どんなローテクでもサービス業でも必ず成功しますよ。ただし、儲け主義では通用しないし、どんな壁にぶつかってもやり続ける覚悟が必要です」
小田会長は現地の言葉が流ちょうなわけではないのに、意志が通じ合い、人気者だ。前進する情熱とひたむきさがあれば、BOPビジネスは日本の中小企業にとって豊かな市場となるだろう。
(文中敬称略)
●代表者:小田兼利
●創設:2002年
●業種:凝集剤の開発・製造・販売、水処理システムの構築など
●従業員:36名
●年商:8億円(2013年度)
●本社:大阪市中央区
●ホームページ:http://www.poly-glu.com/