ポリグルレディが現地で大活躍
小田に学ぶべきは、コスト積み上げ方式などで価格を決めなかったことだ。
最初にビジネスを始めたバングラデシュでは、当時の庶民の平均月収が3100円ほど。小田は、PGα21Caを1グラム1円ならば手が届くのではないかと考えた。
小田が訪ねた村では、汚れた河川の水を飲料水や料理に使い、下痢で死亡する乳幼児も多かった。1円で10リットルの安全な水が手に入るならば、納得してもらえるのではないか。
だが、それまでタダだった水を1円といえども有料では買ってくれない。第一、白い粉が本当に水を安全にしてくれるのか、住民は冷ややかに見ていた。
ここで、小田はまた工夫の才を発揮する。現地の女性たちを集めて、いかにPGα21Caの浄化力が優れているか見せて、納得させ、彼女たちを販売員として活用した。
小田は彼女らを「ポリグルレディ」と名付け、各地で実演し、その安全性を訴えた。この実演販売が功を奏し、次第に売れるようになった。彼女たちの仕入れと販売の差額はそのまま収入となり、いまではひと月に平均5000円も稼いでいる。現地では一般的に女性たちの地位が低く見られ、稼ぎを得る仕事はなかったので、経済的に貢献しただけでなく、精神的な自立にも役立っている。
ポリグルレディを日本に招いたとき、その中のひとりが「これまで夢を見ることなどできなかったが、いまでは見られるようになった」と語ったという。
2014年9月には安倍晋三首相のバングラデシュ訪問に合わせて、首都ダッカで「日本・バングラデシュ・ビジネスフォーラム」が開催され、そこでポリグルレディのニルファーさんが堂々とプレゼンテーションを行って拍手喝采を受けた。
現在はポリグルボーイも活躍しており、現地法人を設立、社員が4人となった。他の地域でもポリグルレディ・ボーイは広がっており、全世界で150人を超えるほどになった。
小田は過去、バングラデシュを単身で30回以上訪問するなど、海外を飛び回っている。外務省も小田の功績を評価し、政府開発援助による浄化装置設置に協力している。また、2014年度からJICA(国際協力機構)が緊急救援備蓄用としてPGα21Caを小分けした15万袋(1袋2g)を購入することを決定した。