LED照明を制御し、高効率の栽培を実現
キーストーン自身でも植物栽培を行っているが、もともとは植物工場システムの開発・販売が本業だ。テーブルに乗るような栽培システムから工場レベルまでサイズ別に商品をラインナップしている。こうしたシステムの基本ユニットがAGRI Oh!であり、5段積み重ねたものが最も標準的だ。
赤、緑、青のLED光は、野菜を最も効率的に栽培できるように調光制御されている。その理論は、岡崎が開発の過程で自ら研究した成果である。ここまで緻密に制御されたシステムは他社にはないと岡崎は言う。
「植物は動けないだけに、外部環境に対して生き残りをかけて反応します。光、温度、湿度、CO2濃度などの環境条件に一つでも不足があると、成長速度が落ちる。また、光も波長によって成長を左右するので、成長過程に従って、どの波長をどれだけ強く、どれだけ長く照射すると最も効率がいいのか、研究して一つの理論を確立しました。つまり、最も仕事をしてくれるLED光を選択的に選んで制御しているのです。野菜の成長に対するエネルギー効率まで考えてLEDシステムを開発している会社は他にないと思いますよ」
栽培の高効率化と簡単な操作性を実現したことによって、どんなスペースにでも植物工場ができるようになった。岡崎は「店産店消」を提唱している。レストラン、ホテル、病院、社員食堂などの片隅にLED菜園を設置すれば、いつでも新鮮な野菜が食べられるし、顧客に対するアピールにもなる。
現在、主な販売先は外食産業と流通業で、銀座にあるイタリアンレストランでは、店舗空間の演出も兼ねて導入している。また、障がい者の職場を確保するために福祉施設が導入したり、ユニークな例では自動車ディーラーが利用している。
茨城県水戸市の茨城日産自動車では、LED菜園をショールームに設置。レディースディに点検やメンテナンスで訪れた女性客に対して野菜をプレゼントしている。
「都市部には戦後の経済成長期に建てられた老朽化したビルが多い。建て直すと容積率が削られるため、そのままになっているので、これを野菜工場にしたいと思っているのです。元気なシニアに働いてもらってもいいし、子供たちと一緒に育ててもいい。これから必ず食料が不足し、野菜の価格も上がるはずです。そうなってからでは遅い。私たちは生活様式を変え、消費地である都市に食料の生産機能を持たせるようにすれば、持続可能になります。それを実現するために私は生まれてきたとさえ思っています」