栄養バランスの良い食事を心がけていても、栄養不足に陥ることがある。その原因は、腸粘膜にすき間ができ、栄養が正しく吸収されない「腸漏れ」だという。医師の平島徹朗さんと秋山祖久さんの共著『たんぱく質と腸の新常識 絶対に漏らしてはいけない新しい腸活とたんぱく質の正しい摂り方』(Gakken)より、一部を紹介する――。

知らない間に起きている「腸漏れ」

ご存じのとおり、腸は栄養を吸収する場所です。しかし、皆さんの腸はちゃんと吸収できているでしょうか?

実は、不要なものが腸から漏れ出して吸収され、そのぶん摂ったはずの栄養素が正しく吸収されていないケースが珍しくありません。それが、リーキーガット症候群、通称「腸漏れ」です。

正常な場合、小腸では粘膜層から消化酵素が分泌され、胃や十二指腸で消化された栄養をさらに分解し、吸収していきます。しかし、腸粘膜の細胞に炎症が起こると、腸粘膜の細胞と細胞の間にすき間ができてしまいます。

腸は栄養吸収の要であり、免疫の要でもあります。必要な栄養を吸収しつつ、取り込みたくないウイルスや菌、アレルギーの原因物質、有害物質、未消化の栄養素などはブロックし排泄するという働きをこなしています。

肝心の栄養素が吸収できず、栄養不足に

ところが、腸粘膜にすき間ができて腸漏れを起こすと、本来ブロックするはずの不要なものを取り込んでしまい、その影響で肝心の栄養素の吸収がおろそかになってしまうのです。これが、腸漏れで栄養不足になる理由です。

【図表1】正常な腸粘膜/腸漏れを起こした腸粘膜
出所=『たんぱく質と腸の新常識』(Gakken)、イラスト=加納徳博

つまり、腸漏れが起こると、口から栄養を十分に摂っていたとしても体内ではそれを吸収できておらず、栄養不足を招くのです。

たんぱく質をはじめとする栄養素がうまく吸収されないと、栄養が不足し、細胞の生まれ変わり(ターンオーバー)の周期が乱れてしまいます。腸粘膜の細胞の新陳代謝もスムーズにできず、腸漏れが悪化。腸粘膜で起こった細胞の炎症は体のあちこちに広がってしまいます。すると、さまざまな不調や病気が起こりやすくなり、さらに腸漏れが悪化……という悪循環に陥ります。