三次元(3D)の設計・製造などで世界をリードする仏ダッソー・システムズは、6月2日に設立20周年を迎えた。ソフトウェアの力でモノづくりの手法を変革してきたこの会社は、新たに「3Dエクスペリエンス・プラットフォーム」という標準ソフトを開発して市場開拓を急いでいる。設立20周年を機に来日したモニカ・メンギニ上級副社長に、新商品の開発を中心とした今後の戦略について話を聞いた。
設計から販売まで巻き込むプラットフォーム
――これまで御社は3DCAD(コンピュータによる設計)のCATIAというソフトウエアに始まり、デジタル・モックアップ(模型)やプロダクト・ライフサイクル・マネジメント(PLM)など、3Dの世界を飛躍的に進化させてきました。今回の3Dエクスペリエンス・プラットフォームはそうした流れの中で、どういう機能が新たに加わっていますか。
【メンギニ】CATIAにしろ、デジタル・モックアップにしろ、われわれのブランド製品群すべてを包含した、PLMという製品ライフサイクル管理の手法を提唱してきました。新世代のPLMをつくるために製品群を買収してきましたが、クラウド上で動く、使いやすいものにしたのが、3Dエクスペリエンス・プラットフォームです。このソフトウェアはコミュニティを通じて、CATIAで作成した3Dデータを共有することができます。仮にCATIAを持っていなくても3Dデータを見ることができます。これがわれわれが新たに提唱する環境でして、単なる設計のプラットフォームではない、「ビジネスエクスペリエンス・プラットフォーム」と呼んでいる理由です。
――コミュニティで3Dデータを共有できるのが特徴だと思いますが、もう少し詳しく説明してください。
【メンギニ】これまでわれわれが、エンジニアの方に設計のプラットフォームを提供する際、共有する世界が設計者の中だけにとどまっていました。プラットフォームを利用する方々が設計者だけに限られていたからですが、今度は、例えばエンジニアが使うアプリケーションを販売の方もご覧いただけるようにしました。すべての部門が情報を共有する仕組みを実現することにより、販売からのフィードバックがマーケティングや設計の方にも届けることができます。イノベーション(技術革新)のサイクルは常に反復を繰り返すため、設計から生産、マーケティング、販売などすべての関係者を巻き込んで、誰でも使いやすい環境をつくり出したのが、このプラットフォームです。
――新たなプラットフォームを利用することにより、どのようなメリットが生まれますか。
【メンギニ】例えばトヨタさん、BMWさんでもいいのですが、3DCADでエンジニアがつくった情報をマスターにして、他の部署でもそれを再利用することができます。再利用できるということは節約につながり、結果としてコストを下げることができることを意味します。また、これまではそれぞれが違うデータをつくる必要がありましたが、これにより、一貫して連続したサイクルが実現可能となり、イノベーションの効率を上げることができます。さまざまな部署がコラボレーションすることで、いろいろな頭脳や専門領域、バックグラウンドを持った方が、すばらしいイノベーションを生む可能性が広がります。