言いにくいことをズバッと言ってもギクシャクしない職場づくりができれば、コミュニケーションコストを大幅に減らすことができる。そんな職場風土のつくり方を、実際の事例に基づいて紹介しよう。

情報伝達パイプの目詰まりを治す研修とは

仕事柄、企業のオフィスを訪ねる機会が多いが、最近、とみに感じるのは静かなオフィスが多いということだ。

シーンとしている、というより、どことなく澄ました感じの職場が多い。連絡事項の大半がメールで伝達される時代であることを考えれば、職場が静かなのは当然かもしれないが、隣に座っている同僚が何を考えているかわからない職場は、座っているだけでストレスになるのではないかと心配になってしまう。

ところが、こうした“冷たい職場”とは真逆の職場が存在する。バイク王のCMでお馴染みのアイケイコーポレーション(以下、アイケイと略)だ。中古バイクの買い取りと販売を事業の中核に据えて、急成長を遂げている。

恵比寿プライムスクエアの18階にある本社を訪ねると、パーテーションの向こうから社員の笑い声や会話が漏れ聞こえてくる。なにしろ賑やかだ。

社員500名を超える東証2部上場企業としては異色のムードだと思うが、そこには秘密があった。社員研修の一環としてEQを鍛える研修を導入しているのである。

すでにご承知の方も多いと思うが、EQとは、Emotional Intelligent Quotientの略で、感情能力や心の知能指数と訳されることが多い。米国の心理学者であるピーター・サロベイとジョン・メイヤーが、ビジネスで成功する人物は知能指数だけでなく目的に応じて感情をうまく調整したり整理したりする能力に長けていることを発見し、この能力をEI(Emotional Intelligence)と名付けたのがことの始まりだ。

日本には、サロベイとメイヤーの論文を通して1990年代に紹介されてブームとなり、人口に膾炙しているIQという言葉に対置する形で、EQと称されるようになった。

研修を担当する人財管理室シニアリーダーの松山和生氏に、EQ研修導入の経緯を聞いてみた。

「そもそも弊社は、『IQよりもEQ』という考え方を持っています。知能の高さよりも心の豊かさのほうが大切だという信念ですね。一方、弊社は98年の設立以来、急成長を遂げてきたため、組織の基盤を整備する必要がありました。弊社のニーズに合致した人材研修のあり方を試行錯誤しているうちに、セレブリックスのEQ理論を応用した人材研修に行き着いたわけです」