売上高の7~8%を人材教育に投じるともいわれる外資系コンサルティング会社アクセンチュアでは、入社後約3年で一人前に鍛え上げる手法をもっている。どのような育成、評価、動機づけ、昇進の仕組みで短期間に人材を成長させているのだろうか。

入社後3年で一人前に育て上げる仕組み

企業は人なり──。誰も否定できないこの普遍的な言葉も、その中身である人材育成の手法が近年多様化している。かつては配属部門の上司が教育の全権を握り、培ったノウハウを伝授し、時には部下が盗んで学ぶといういわば属人的OJT(職場内訓練)が日本企業の典型的手法だった。

しかし、市場環境やビジネスモデルの変化が激しさを増す時代に入り、上司依存、横並び教育を廃し、個人のパフォーマンスを重視した部門横断型の、能力別・選抜型教育を導入する企業も増えている。あるいはそうかと思えば、「商社は人なり」といわれる大手総合商社のように入社後10年間は格差を設けない安定的報酬を保障。その間は上司を含む部門全体で個人のCDP(キャリア・デベロップメント・プログラム)に基づいた計画的育成により、じっくりと一人前に育て上げる手法を導入する企業も登場している。

逆にソフト・ハード両面にわたる膨大な教育の“仕掛け”を網の目のように張り巡らせることで個人の意欲を喚起し、駆り立てながら短期間でプロフェッショナル人材に育て上げる手法を実践しているのが外資系コンサルティング会社のアクセンチュアだ。

同社はプロフェッショナル志向の優秀な学生の人気企業として知られ、例年200人の新卒を採用している。その人事制度も文字通りプロフェッショナルの育成を主眼とし、比較的スピードの速い昇進が強力なインセンティブとなり、社員は自らの能力開発に専念する。

職位はアナリスト、コンサルタント、マネジャー、シニアマネジャー、パートナーの5段階のクラスに分かれ、新卒入社後、半年間のトレーニングを経てアナリストとなる。アナリストからコンサルタントに昇進するのに最短で2年、コンサルタントからマネジャーへの昇進は2~3年という早さだ。

20代半ば過ぎのマネジャーというのは日本の大手企業に比べて6~7年も早い。さらに経営陣の一角に入るパートナーは最短で32~33歳というから驚く。同社の武田安正副社長は「当社には常に成長を求めている人材が集まってきています。上にいけばいくほど役割も権限も大きくなり、さらなる成長が可能です。評価に対する公平性・透明性を高くすることでタイムリーな昇進を実現している」と指摘する。