本来なら自分が体得したノウハウを秘匿したがる人間が社内には必ずいるものだ。だが、同社の場合はカルチャーもあるが、ノウハウを披瀝することで、その分野の専門家として認知度を広げ、後述するが社内の市場価値を高めることにもつながるというインセンティブもある。上司の育成・指導だけではなく、こうした体系化された知識の習得と水平的な知の連携が同社のプロフェッショナル早期育成の有力な武器となっている。

もちろん座学の修養だけではなく、OJTによる実践も徹底している。新人といえども独立したコンサルタントと見なされ、決して甘えは許されない。たとえば文科系出身でも最初にシステムのプログラミングを実際に体験させる。本来ならSEの業務だが「要望された機能を実現するために、自分の感情とか好みの影響を受けずに最初から最後まで論理的に組み立てる能力を養うのにプログラミング作業は最適」(武田副社長)という理由からだ。

コンサルタントに不可欠なプレゼンテーション能力も、前提となる資料の作り方から徹底的に叩き込まれる。ドキュメントの作成も“てにをは”に至る細部まで繰り返し勉強させる。作成したドキュメントも情報量が豊富であればいいというものではない。本当に必要なものとそうでないものを峻別する能力こそ重要だと指摘する。

「1枚の紙で発するメッセージは1つ、多くても2つにしたいが、心配なので自分が知っていることを多く盛り込み、アピールしたがります。でも本当はそうじゃない。必要でないものを切り捨てていくことが大事ですが、何がいらないものかを判断するのは難しい。つまり、わからないということがわかることが大変重要なんです。そこをいかに気づかせるかを重視しています」(武田副社長)

実際に現場に帯同し、先輩のプレゼンテーションぶりを見て勉強させる。

「父親の背中を見て育つではないですが、上の人間がやっているところをできるだけ見せるようにしています。これは新人の教育だけではなく、上の人間もクライアントに質問でやりこめられると後輩にメンツが立たない。そうならないようにしようという意識を持たせる効果もあります」(武田副社長)

座学と実践による能力の開発をさらにスピードアップし、自発的に成長のチャンスを獲得するべく駆り立てるダイナミックな“装置”も存在する。クライアントから依頼された案件ごとにプロジェクトが結成されるが、その際、通常は上からメンバーを指名するが、同社の場合は、公募方式によってメンバーが構成される仕組みになっている。