ノウハウを提供し「社内市場価値」を高める

座学の1つは同社が独自に開発したeラーニングによるコンサルティングマニュアルの習得である。コンサルタントの仕事は診断、レポート作成、提案、システム製作、メンテナンスという流れを辿るが、それぞれの工程ごとに何をしなければいけないのかを短期間で習得可能な仕組みになっている。学習内容は必ず受講しなければいけないコアトレーニングと必要に応じて受講するオプショントレーニングの2系統に分かれ、個人ごとに年間に受講すべき時間枠が決められている。

当然、日々の業務を遂行しながら受講するだけではなく、テストもこなさなくてはいけない。ややもすると受講を怠る可能性もあるが、それは許されない。なぜなら受講は前述した人材育成の評価に直結し、仕事が忙しくても学習する時間を確保しなければならないのだ。それだけではない。同様に上司であるスーパーバイザーも部下に受講させなければ人材育成の評価に影響する。

「あらかじめ何を受講させるのかという目標設定がされているため、仕事をある程度中断させても勉強させなければいけない。それを判断するのがスーパーバイザーなんです。部下に教育の機会を与えないと、ピープルデベロッパーの評価に関わるのです」(武田副社長)

もう1つは、eラーニングの応用編とでも言うべきもので、実際のコンサルティング活動に有効なグローバルベースのノウハウが集積されたデータベースの利用である。世界各国で展開するプロジェクトが実践した約5000のデータベースが存在し、常に更新される。その知の集積を同社はナレッジエクスチェンジ(KX)と呼んでいる。社員はKXにアクセスし、今直面している顧客の要望の解決策を探ることができる。

たとえばある企業から本社機能を整理し、半分にしたいという要望があった場合、KXにアクセスすると似たような事例がヒットし、そこにおける落とし穴や注意点などの情報を知ることができる。その結果、日本のシンクタンクなら通常2週間を要する提案書も1週間で作成することが可能になる。

さらに物としての情報の“ノウハウ”だけでなく、“ノウフー”へのアクセスも可能だ。同社には業種ごとに世界レベルのネットワークコミュニティが構築されており生きた知恵と情報を入手できる。

「ある問題の解決策に悩んでいる場合、たとえば製造業のコミュニティにメールを投げると、24時間以内にその分野の専門家から返事がきます。これもスチュワードシップの理念が浸透しているために可能なのです。つまり、困っている人がいれば必ず助けるという風土が定着しています」(武田副社長)