もちろん、誰もが簡単に昇進できるわけではない。昇進するには社員の自発的な能力開発が不可欠だが、これをサポートする仕組みが確立しているのが同社の特徴だ。

同社の組織はプロジェクト単位で動いているが、当然新人もその中に放り込まれる。プロジェクト人員は数十人単位から数百人単位に及ぶ規模もあれば、期間も半年間、あるいは1年、2年といった長期にわたるケースなどさまざまである。プロジェクトごとにスーパーバイザーと呼ばれる上のクラスの上司が張り付くが、その重要な役割が部下の育成・指導である。

その根底にあるのが「スチュワードシップ」(Stewardship)と呼ばれる同社がカルチャーとして最も重要視している価値観だ。1人ひとりがオーナーとしての意識を持って行動し、次世代にわたり人材を育成するという意味であるが、これが全社員共通の行動指針となっている。

「自分だけよければいいというのではなく、ビジネスの資産を引き継いでいく次の世代を育てていくことを重視しており、自分の後継者をちゃんと育てているかが高く評価される。実際に、私を含めてリーダーのポジションにある人間は必ず自分の後継者を2人報告することになっています」(武田副社長)

この理念を具現化したのが人事評価の3大項目の1つである「ピープルデベロッパー」、つまり人材育成だ。スーパーバイザーは期初に人材育成に関する目標値などを部下と話し合って設定。その進捗状況を見ながら3カ月に1回評価を下し、部下にフィードバックする。しかも評価は直属のスーパーバイザーだけではなく、過去に本人が関与したプロジェクトのスーパーバイザーも含めた複数の人間が議論して決める方式だ。時には数十人による白熱した議論に発展する。

「直属の上司が『彼はこんなすばらしいことをしている』と褒めれば、ほかのスーパーバイザーが『彼は以前仕事をしたときにこういう問題があったが、それには触れていない。君の評価は甘いんじゃないか』と言って激論になる場面もあります。オープンに徹底した議論を通じて最終的な評価を下しています」(武田副社長)

この“ワイガヤ評価”のフィードバックが人材育成を促す柱の1つとすれば、もう1つの柱が教育である。同社の教育は徹底した座学と実践の両輪からなる。