盛り上がりを見せるブラジルW杯。各国のスター選手が集まる中で、ひときわ輝きを放つのがアルゼンチンのメッシ、ポルトガルのロナウド、ブラジルのネイマールの3人だ。『誰がどう言おうと議論の余地はない。現時点で、この3人が世界最高の選手だ』とは優勝候補ブラジル代表の監督スコラーリの言葉だ。欧州の著名ジャーナリストが本人たちも含めた有力者たちの証言をもとに、プライベートも含めて3人を徹底比較した書籍が『Who is the Best? ~メッシ、ロナウド、ネイマール。最高は誰だ?』。なぜ、この3人は別格なのか? 様々な面からその秘密を見ていこう。
――1992年夏のある午後、ロサリオ市グランドーリ・フットボール場

「あの日、1986年生まれのチームを作ろうとしたら1人足りなかったんだ。ほかの子供が準備運動をしている間、私は手にTシャツを持って最後の1人を待っていた。

結局その子は来なくて、辺りを見回すと1人の小さな男の子が壁に向かってボールを蹴り続けているのを見つけた。試合の時間が迫ってきて、私は心の中でつぶやいた。『チクショウ、あの小僧がまともにプレーできるのかよくわからないが、しょうがない……』

そこでこの子のおばあちゃんであるセリアに話しかけると、彼女が大変なフットボール好きであることがわかり、私は頼んだ。『この子をちょっと貸してくれませんか』。おばあちゃんは孫のプレー姿を見たかったんだ。それまで何度も、おばあちゃんは私にトライアウトの機会をくれと言っていた。この少年にどれほどの才能があるかを語っていたんだ。

だけど母親だったかおばさんだったかが、やらせたがらなかった。『この子はまだ小さいのよ。ほかの子は皆、大きいじゃないの!』。なだめるために私が言った。『とりあえず試合に入れてみて、もしこの子が圧倒されてしまうようなら私が試合を止めるから』」

「そして、この小僧にユニフォームを渡した。小僧はユニフォームを着た。最初のボールはあいつの右側に来た……何も起こらなかった。左利きだからボールのコントロールができなかったんだ。2回目は左に来たボールを捕まえて、何人もドリブルでかわしていった。

『行け、どんどん行け!』と私は小僧に向かって叫んだ。誰かが小僧をケガさせないか心配だったが、小僧はスイスイと進んでいった。そのままゴールを決めたかどうかは覚えてないけど、あんな動きをする子は初めてだった。『こんな子は初めてだ』と思わずつぶやいていた。それから、その子をチームから外したことはなかった」

そう振り返るのはドン・アパの愛称で呼ばれているサルバドル・リカルド・アパリシオで、これがレオ・メッシにとって初めてフィールドでサッカーをした日となった。