売り手のJAが強くなる価格交渉

JA農協の価格への影響力を考えるうえでは、コメの価格がどこで、どのように決まっているのかも重要だ。

かつては、公正なコメ価格を形成する場として「全国米穀取引・価格形成センター」があり、入札によって価格が決められていた。しかし2005年には、全農秋田県本部によるコメの不正売却事件が発覚。農水省の資料によると、農家のコメを横流しして補助金を不正に受け取ったほか、センターの入札制度を利用し、子会社との架空取引を行っていたことも問題となった。

その後、コメ取引は、集荷業者と卸売業者が直接価格を決める相対取引が中心になっていった。センターの利用は減少し、2011年3月に廃止された。

相対取引では、集荷量の多い売り手ほど価格交渉で強い立場に立ちやすい。前述した通り、集出荷業者の集荷量に占めるJA系統の割合は9割を超える。こうした高い市場占有力を持つJA農協が卸売業者と直接交渉する現在の仕組みが、米価への影響力を強めている。

コメの先物取引をめぐる議論も、この価格形成の問題と関係している。先物市場があれば、農家は価格変動のリスクをヘッジできるというメリットを受ける。それなのにJA農協が先物取引に反対するのは、公正・中立的な先物価格が指標価格として実現すれば、相対取引で価格をコントロールできなくなるからである。しかし、JA農協の中でも熱心に先物取引実現を運動している組合長がいる。農家の利益になるからである。

コメ売り場の棚
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米価が下がりそうなとき、JAはどう動いてきたのか

米価が下落しそうな局面で、JA農協はどのように動いてきたのか。過去の事例を見ると、現在を考える手がかりになる。

2007年産について、JA農協には作付け前の段階で種籾の取引が活発化しているという情報が入った。JA農協は過剰な作付けがあると予想した。売れないコメの販売委託を農家から受けると、金利・保管料を負担しなければならなくなる。そこで、JA農協は農家が自分たちに販売を委託しないよう、JA農協は農家への概算金(仮渡金)を前年の1万2000円から7000円へと大幅に減額した。農家の利益を犠牲にして、組織の利益を優先したのだ。

その後、自民党農林族議員とJA農協は、政府に34万トンを備蓄米として買入れ・保管させ、米価の底上げを行なったほか、減反補助金を補正予算で500億円上積みし、翌年の減反を10万ha強化し110万haとする方向を、打ち出させた。政府が米価浮揚のための市場整備を行ったのだ。

2025年産米についても、似たような構図がある。当時、作付面積が9%増加し、実際の生産量も10%増えることが見込まれるなかでも、JA農協が高い概算金を提示した背景には、価格が下落しようとすれば、政府による買い入れ(備蓄米の買戻し)が行われるとの期待があったはずだ。実際に、その期待は実現した。