高い米価で、農家も失うものがある
JA農協は、本来、農家が共同して経済的利益を高めるための組織である。しかし、ここまで見てきたように、JAという組織の利益と、農家の利益が一致するとは限らない。
米価が下落すれば、農家の収入は減る。しかし、直接支払いすれば農家も困らない。一方で、JA農協にとっては、高い米価を維持すれば一方で、販売手数料を高く維持できるばかりではなく、零細な兼業農家を維持して、その兼業収入を預金として活用できるという大きな利益がある。しかし、生産量を抑えて価格を維持すれば、消費者は高いコメを買うことになり、農家にとっても消費が減って、生産拡大の機会が失われる。
米価を上げれば、消費者の指向は、コメからパンやスパゲッティなど小麦製品に移っていき、コメの需要を減少させ、コメ農家の市場を奪う。これが長期的なコメ需要減少の大きな要因だ。米価を高くすることでコメの需要は減少し、それに応じて減反を年々強化してきた。ピーク時(1967年)からコメの生産は半分に減少する一方(図表3参照)、価格面で相対的に有利となった小麦の輸入は1960年から約2倍に増えた(※4)。コメ業界を代表するJA農協が、高米価で国産のコメ殺しを行ってきたのだ。食料自給率低下は当然ではないか。
いまこそ農協改革が必要だ
令和のコメ騒動を「誰が悪かったのか」という犯人捜しだけで終わらせてはいけない。筆者は今回の騒動を、JA農協が強い市場影響力を持つ現在の制度が生んだ問題の一つと捉えている。
問うべきなのは、現在のコメ政策や農協制度が、農家と消費者の双方にとって望ましい仕組みになっているのか、ということだ。減反は年々強化される。消費者にも利益があるEUのような直接支払いは導入されない。相変わらず「高い米価が農家維持のためだ」と主張される。
JA農協のシェアは同じでも、食糧管理制度(1942年~1995年)の時代、JA農協は独占的な力を行使する必要がなかった。過剰在庫もすべて政府が負担してくれた(図表3参照)。高い資材価格も生産者米価(政府買い入れ価格)に反映された。JA農協は、生産者米価引き上げの政治活動さえ行えばよかった。
しかし、食管制度がなくなったからこそ、JA農協は本稿で述べてきたような独占的な力を行使するようになったのではないか。このことが今や、農家と消費者の利益を損なうまでになった。安倍元総理は、農林族議員の抵抗にあったが、JA全農等の株式会社化による独占禁止法の適用などに取り組もうとした。高市総理は、尊敬する安倍元総理がトライしながら未完に終わった農協改革に取り組む必要があるのではないか。
そのために農水大臣に任命するのは、2代続いた鈴木氏や簗氏のような農林族議員であってはならない。
検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます



