増えたコメ在庫は誰が抱えていたのか

コメ価格を考えるうえでは、在庫がどこに積み上がっていたのかも重要だ。

農林水産省「令和8年8月の米穀流通の動向(集荷、販売、民間在庫)」によると、令和8年8月末現在の全国の民間在庫は、出荷・販売段階の合計で150万玄米トンだった。前年同月より66万玄米トン増えている。内訳をみると、出荷段階が108万玄米トン(対前年同月+57万玄米トン)、販売段階は42万玄米トン(対前年同月+9万玄米トン)だった。

では、この108万トンを誰が持っていたのか。出荷段階にはJA系統だけでなく、商系の集荷業者も含まれるため、この統計だけからJAの在庫量を直接特定することはできない。

ただし、前項で見たように、集出荷業者の集荷量300万トンのうち、JA系統は280万トン、商系は20万トンである。集荷量では商系はわずかで、JA系統が圧倒的な割合を占めている。したがって、出荷段階で積み上がった在庫についても、JA系統が相当部分を占めているはずだ。JA農協は政府による備蓄米の買戻しを予定・期待して、在庫の積み増しを行った。

一方、出荷段階ほどではないが、販売段階の在庫も増えてはいる。販売業者はJA農協から高値で仕入れたコメにマージンをつけて販売するので、必然的に高値で売らざるを得ない。すると消費者は買い控えるので、在庫は減らない。この在庫をいつまでも持ち続けるわけにはいかないので、どこかで赤字覚悟で値下げするしかなくなるが、それまでは在庫を抱えやすいのだ。

これに対して、JA農協の場合は、農家に概算金を払っているが、これは委託販売による仮渡金なので、卸売業者に対する現実の販売価格が予想より低下すると、農家から過払いとなった概算金の一部を徴収することができる。販売業者ほど切実ではない。つまり、出荷段階と販売段階の在庫増加は、理由をわけて考える必要がある。

「減反廃止」でも生産を抑える仕組み

筆者がコメ政策について「減反は今も続いている」と論じると、しばしば「減反はすでに廃止されたはずだ」という反論を受ける。

たしかに、2014年に安倍総理は「減反廃止」を打ち出したが、これはフェイクニュースだった。国から都道府県などを通じて生産者まで通知してきたコメの「生産数量目標」を廃止しただけのことだった(しかも、現在も農水省は翌年産米の「適正生産量」を決定、公表している。これに基づき、都道府県、市町村段階で、JAや行政などが参加する協議会がコメや他の作物をどれだけ作るかを決定し、生産者に通知している)。この時、今は減反廃止と言っている農林族議員たちは、安倍総理の発言を必死に消しに回っていた。

減反政策とは、「主食用米の生産量を抑える仕組み(生産調整)」だ。そのコアである手段は、主食用以外の作物(加工・輸出用等のコメを含む)を作れば交付される補助金だ。名称は変わったが、制度は現在も変わりなく続いている。

政府は正式に「減反」という言葉を制度名として使ってきたわけではない。これはマスコミの造語だ。政府が使用した言葉である“生産調整”は、「稲作転換対策」「水田総合対策」「水田利用再編対策」「水田営農活性化対策」など、名称を変えながら続いてきた。現在の「水田活用の直接支払交付金」も、主食用米以外への転換を促すことで、主食用米の生産を抑える役割を果たしている。

今は水田(230万ha)の4割(93万ha)(※3)に主食のコメを作らせないようにしている。量で言えば、1150万トン作れるものを685万トンに減少させているのだ。

※3 現在の水田面積から令和7年の作付面積(136.7万ha)を引いた面積。