スーパーのコメ価格を左右する力

では、今回のコメ価格高騰を考えるとき、3つのシェアのうち、どの数字を見るべきなのか。

農水省には「スーパーでの販売数量・価格の推移(KSP-POSデータ全国、週次)」という統計がある。全国約1000店舗のスーパーのPOSデータを集計したものだ。

【図表2】スーパーでの販売数量・価格の推移(POSデータに基づき作成、全国・週次)

スーパーで販売されるコメは、一般に集荷業者から卸売業者を経て店頭に並ぶ。したがって、スーパーでの販売価格への影響力を考えるのであれば、生産量全体に占める割合ではなく、今回は集荷業者の集荷量に占める割合を見るべきだろう。

この場合、JA農協のシェアは93%と圧倒的だ。JA農協やそれに関係の近い人は、しばしば「生産量全体に占めるJAのシェア」を用いて語るが、筆者にはJA農協の影響力を過小に見せるための欺瞞に思える。

44%という数字には、市場に出ない農家の自家消費分さえも含まれている。また、53%という数字には、農家が道の駅やインターネットなどで直接販売する分も含まれる。こうしたコメまで分母に含めてしまうと、スーパーなどの流通市場におけるJA農協の影響力は見えにくくなる。

「JAのシェアは4割程度だから、コメ価格への影響力も小さい」と結論づけることは間違いである。どの市場への影響力を論じるのかによって、シェアは異なる。その際、農家が自分で食べる飯米や江藤拓大臣が「私は米を買ったことがない」と言った、いわゆる縁古米(図表1では“無償譲渡”)まで含めて市場とすることが妥当なのだろうか?

「昔は9割、今は4割」は本当なのか

「JAのシェアは、1960年代には約9割あったが、現在は4割程度まで低下した」と説明されることがある(参考記事)。だが、この2つの数字は同じ分母で計算されたものではない。比較する土俵(市場)が全く異なるのだ。

1960年代の「約9割」は、集出荷業者の集荷量に占めるJA農協の割合を示した数字だ。一方、現在の「約4割」は、コメの生産量全体に占めるJA農協の集荷量の割合である。

つまり、異なる指標を比較していることになる。今のシェアでも93%と44%を比較しているのだ。

では、同じ分母で比べるとどうなるのか。

食糧管理制度の時代から、JA農協の集出荷業者に占めるシェアは高い水準で推移していいるが、これは今も変わらないのだ。最初は、JA農協のシェアは100%だったが、独占すぎるとGHQに批判され、1948年全集連系の商人を入れたが、それでもJA農協のシェアは96.3%(※1)だった。以降、JA農協のシェアは、65年94%、85年95%、95年95%と、食管制度廃止まで変化しなかった。商人系の集荷業者は、数は多かったものの〔2000年時点で一次集荷業者は全農系1182、商人(全集連)系1338〕、実際の集荷量はわずかだった(食糧庁調べ)。上記の通り、現在93%なので、JA農協の集荷量シェアに変化はないということだ。

また、生産量全体に占めるJA農協の割合は、終戦後の1950年で40%、53年では26%と、今の44%より低い(※2)。食管制度の下で、農家がJA農協を通じて政府に売り渡す正規米のほかに、政府米を大幅に上回る価格で取引される膨大な「非正規流通米(ヤミ米)」の存在があったからである。以降、政府に売る際の米価が上昇するにつれ、ヤミ流通の比率は低下していったが、それでも1995年において生産量全体に占めるJA農協の割合は48%に過ぎない。

もちろん、たとえ生産量全体に占める4割でも、他の業界では「極めて大きいシェアだ」と言うだろうし、そもそも、JA農協、特に全農がコメ流通でガリバー的な地位を占めていることは、コメ業界では常識と受け止められているのではないだろうか。

※1 『戦後日本の食料・農業・農村 戦後改革・経済復興期 I』(農林統計協会)より
※2 『食糧管理史 総論Ⅱ』に基づき、当時のJA農協のシェア96%から推計