「時間」「空間」「論理」の中で伝える
話を伝えるとき、たとえ同じ内容でも切り口によって「時間」「空間」「論理」……など少なくとも3通りはストーリーの組み立て方が考えられるだろう。あらゆる角度から展開が可能ながら、必要なのは「自分なりの順序のルール」である。これさえしっかり決めて組み立てれば、話はスッキリと流れていくものだ。
村上春樹氏の米国ハードカバー版『1Q84』の装丁を手がけたブックデザイナーのチップ・キッド氏がTEDのステージに登壇したときのこと。25年のデザイナー人生における作品を振り返って、過去の作品から説明を始めた。コメディアンのような振る舞いや服装、その語り口もユニークながら、繰り広げられたのは感覚的にも見えるブックデザインにあたっての、「論理展開」だった。
キッド氏にとってのカバーデザインとは「この本の内容は、どう見えるか」を考えることであり、読者に「どんな話か」を一目で見せ、結果的に「これは読むべきだ」と思わせることだという。この考えをもとに、彼は「どんなデザインに仕上げるか」を考察し、作品作りの思想と論理を繰り広げていった。