「見た目が9割」の理論って本当?
話者が聞き手に与える印象の3要素である「3V」という言葉を、聞いたことがある方は多いかもしれない。これは人物の印象を決めるとされる3要素の頭文字である。その内訳は……、
Visual(視覚情報:見た目<表情・視線など>)… 55%
Vocal(聴覚情報:声と話し方<質・速さ・声の大きさ・口調など>)… 38%
Verbal(言語情報:言葉の意味・話の内容など)… 7%
このデータからは、人の印象の9割が「見た目・話し方」で決まり、内容よりもイメージが大切だという印象受けるだろう。
実はこれは、アメリカUCLA大学の心理学者アルバート・メラビアン博士のコミュニケーションに関する実験であり、本人は「あくまでも話者の『好き―嫌い』など感情や態度に関するコミュニケーション要素の実験であり、それ以外にはあてはまらない」(*1)としている。顔写真を使った限定的な要素実験のもとでのみ有効な数字ながら、さまざまな解釈で一人歩きしたデータが、日本ではあらゆるスピーチや対人関係における「見た目が9割を決める」といった解釈として広がっていったようだ。
博士自身も「話の中身が7%しか意味をもたないわけがない」と言うように、この数字をあらゆる場面にあてはめるわけにはいかないし、少なくともこの数値以上に「内容の重要度は高い」と考えられる。
それでもアイコンタクトをはじめとする人物の「視聴覚イメージ」が、話を聞く側に与える印象を決め、聞こうとする態度、ひいては「伝わる効果」に影響を与えるのは間違いない。アイコンタクトや身振りの詳細は、またの機会にふれさせていただくが、今回は服装やその場にあわせた、効果的な印象の作り方を考えていきたいと思う。たとえば、服装の違いによるこんな行動心理の実験を見てみよう。