3本幹で、話の輪郭をくっきりさせる
とにかく話はおもしろく、とめどなくあふれ出る知識には感心する……。けれども、話を聞き終えてみると、輪郭がボヤけてしまって結局何が言いたかったのか? と、大事なポイントを理解できなかった経験はないだろうか。雑談ならともかく、商談の席においては避けたい流れである。
察しがいい読者ならもうお気づきだろう。今回のテーマは「ポイントを絞って伝える」コツについてだ。
話したいことがたくさんあったとしても、話のポイントは3点までが効果的だとされている。それ以上伝えても、むしろ印象をボヤけさせ、結果として記憶の妨げになってしまうからだ。
話の目的がハッキリしている場合、3本の幹を立てて、それぞれの幹から枝葉へと展開するイメージが、聞き手が理解しやすい情報伝達手段となる。
まずは「本日、お話したいことは3点あります」のように、話のポイントを予め提示することから始めるのも大切だ。
「話す内容のポイント」とは、裏を返せば「聞くべきポイント」だ。
前もってポイントがわかれば、聞き手はその部分に焦点を絞って聞くように心の準備ができ、必要なことを重点的に伝えるのに効果的に作用する。
プレゼンの名手と言われたスティーブ・ジョブズは、話をする際に必ず3つのポイントを挙げ、そこからまた枝分かれするように話を展開した。拙著『スティーブ・ジョブズに学ぶ英語プレゼン』(日経BP社)にも登場する有名なスタンフォード大学でのスピーチでも「今日話すことは3つです。たった3つだけ。まず~、次に~、最後に~」と予め明示している。
最初にポイントを列挙することで、聞き手は目の前に地図を広げてもらったかのように、全体像をつかめるというわけだ。
一つの主題に入ったところで、その中でさらに伝えたい<=聞くべき>ポイントを3つまで提示する。一本の幹からまた3枝に分かれるイメージだ。
枝分かれのコツは、最初の主題から次に移るときに「話が変わる」ことをハッキリ告げること。これで話の内容は常に整然とし、聞き手は最初に広げた地図の中で、自分が今どこにいるのかが把握できるので迷うことがない。
もちろん、これは営業トークや商談でも応用できるテクニックだ。
なぜ、話を展開する際の軸は3点が望ましいかを心理学的にみてみると、人がもっとも覚えていやすい数が3つまでとされるからだ。プリンストン大学のジョージ・A.ミラー博士は7±2が、人間の記憶の限界であるとしている(*)。ジョン・F・ケネディのスピーチライターとして有名なテッド・ソレンセンの原稿には、目標や成果番号にすべて5つ以下の番号(*2)がふられていたそうだ。