話を優位に運ぶ“つかみ”
アル・ゴア元米国副大統領がプレゼンカンファレンスに登壇した。16分ほどの地球温暖化の問題についての提唱が主題だった……はずが、ゴア氏が話し始めたのは自虐ネタだった。
副大統領のときには専用飛行機で移動したのに、今じゃ空港で靴を脱がされ検査までされる。ふとバックミラーを見ると、いつも車の後ろにいた警護車がみえず、しかも自分が運転をしている……と、すすり泣くふりまでして見せる。自虐ネタの最後には、自分がファミレス経営を始めたと噂が立ち、かつての戦友ビル・クリントンに「アル、おめでとう」と祝福の電話までもらったというものだった。
およそ6分にわたって笑いのトークショーを繰り広げたが、これは自信の人間味を醸し出す、ちょっと長めの“つかみ”である。かつての超VIPが今や空港で靴を脱がされる……自分たちとなんら変わらない人間としての姿は、仲間のように受け入れられ、観客はすっかりアル・ゴアの話術のとりこになっていった。
実はこの自虐ネタは、本題に耳を傾けてもらい、主張を優位に展開させる手法のひとつとして機能を果たしているのである。そこから、やっと本題の地球温暖化問題について、シリアスな話が始まった。内容は、米国を例に地球の気温上昇にはじまり、エネルギーの効率化の必要性、そして自分たちのCO2排出量を把握など、地球上の私たちがすべき15項目をあげると、深刻な問題として、地球環境を考えた生活に転換すべきだという主張をはじめたのだ。