肯定的に話を聞く同調ムードをつくる

主題に入るときには、会場にはすでにアル・ゴアとの同調ムードが出来あがっていた。いきなり深刻な問題をつきつけられて、自分たちがすべきことを並べられても、にわかには受け入れがたい。ところが、聞き手の感情は「かつてのVIPは今や自分たちと同じ人間だ」としてゴア氏に好意的に傾いていたため、突きつけられた課題も、すでに肯定的に受け入れやすい心理状態になっていたのだ。

デール・カーネギーは「巧みな話し手は、最初から多くの同調反応を獲得する。これに成功すれば、その話し手は、その後の聞き手の心理経過をある程度すでに肯定的な方向に向けてしまったようなもの」(*)だとしている。つまり、ゴア氏はこの自虐ネタは単なる笑いのショーではなく、それ以降の主張を肯定的に受け入れてもらうための伏線としたのである。