パワー・指導力を感じさせる色彩効果とは

電話ボックス内のよく見える位置に10セントコインを置き、他の人がボックスに入った後に「10セントコインが置いてなかったか?」と尋ねるという実験があった(*2)。その際、きちんとした身なりの人が聞いたときには77%が10セントを渡してもらえるのに対し、見劣りのする身なりで労働者風の道具を持った人物像の場合は、38%しか渡してもらえなかった。この実験から「見た目で扱いが大きく異なる」ことがうかがえるだろう。

たとえば政治家は、話し手の服装、振る舞い、声のトーンや話し方が、印象に大きな影響を与えることを考えて、選挙ポスターで使うイメージ写真、テレビ映えのするネクタイ、声の高さ、話し方……など、年々イメージ戦略を重要視するようになってきた。日本の地方選挙では、むしろターゲットとする有権者層に近い服装で街を駆け回る姿も見られる。

アメリカの大統領選では、そのスピーチや討論の内容もさることながら、ヴィジュアル要素も大切にされてきた。そのため大統領にはスピーチライターもいれば、戦略としてのイメージアドバイザーも存在する。米国大統領のネクタイに赤が多いのも、若くはつらつとして、パワーあふれるイメージを演出するためだ。

一般的な色彩効果としては「パワー・指導力を感じさせたい時は“赤”」「落ち着きや安定感を感じさせたい時は“青”」(ただし政党色などを使うときは別として)とされ、人物像としての印象に強い影響力を持つと考えられるネクタイの色は、重要視されてきた。

近年ではオバマ大統領がこうしたイメージ戦略の記憶に新しいが、最初にこうした手段を取り入れたのはケネディ大統領だとされている。テレビ討論の際、若くはつらつとしたケネディに対して、ニクソンが見劣りをしたというのは有名な話だ。