「うまく連携が取れていれば、たとえその案件がダメになったとしても、『やれることはやったのだから』と納得してくれるもの。もちろん引き渡しになれば、全員が喜んでくれる。私が営業マン人生で味わってきた同じような喜びを、全員にも経験してほしい」と高吉所長は語る。
その高吉所長のデスクの上には、「お客様情報シート」というピンク色のファイルが置いてある。そこには、土地のオーナーやテナント企業に、どのように営業アプローチしているのか、1人ひとり毎週更新してきたシートがぎっしり綴じられている。
営業マンならいつでも閲覧が許されており、伊東主任のようなベテランのシートをめくっていけば、その“手の内”を学ぶことできる。営業マンにとっては“虎の巻”のファイルだ。
「ノルマを全員が必ず達成できるとは限らない。誰かがカバーしながら、いままで営業所の実績をつくってきた。ラグビーの『ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン』と一緒。自分の営業スキルを盗んで後輩が成績を伸ばしてくれたら、自分のことのように嬉しい」
そう語る伊東主任を高吉所長は頼もしげに見つめる。どうやら高吉所長の“コミュニケーション哲学”は、営業所の中に着実に浸透しているようだ。
※すべて雑誌掲載当時
(藤原武史=撮影 大和ハウス工業=写真)