そこで高吉所長が求めているのが、日々の営業活動で地域の消費者ニーズをつかみ取り、どのようなテナント企業が有望なのか、常に頭の中を回転させること。発想力とマーケティング理論を組み合わせることで、テナント企業と土地オーナー双方のお客様に喜んでもらえる店舗開発が可能になるからだ。つまり、「報告シート2」は発想力強化のトレーニングシートなのだ。

また店舗開発は、契約からテナント企業への引き渡しまで、早くても半年以上かかる長丁場のプロジェクト。その過程では、公正証書の取り交わしや、各役所への許認可の申請など重要なプロセスがあり、1つでも忘れたら全体の進行が大きく狂う。

その防止策として、「個別スケジュール」という具体的に進んでいる物件ごとの管理表を週1回更新する。「×」印のついた未確定項目が確定・実行されれば、「○」印に変更し、その日付も記す。そうすることで、工程管理の確認や点検が行われる。

さらに週1回、「業務内容」という手書きのシートも提出する。高吉所長は「備忘録のようなもの」というが、確かに「○○会社 4月15日 区画」などの走り書きがあるだけ。部外者には何の意味か見当もつかないが、区画についての打ち合わせなど、細かいながらも重要な仕事があることを、自分に念押しする狙いが込められているのだ。

週1回提出分に取りかかる週末になると、伊東主任たち営業マンは多少の残業も覚悟のうえ。しかし、当たり前のように作成する中で、自らの行動・目標管理が徹底されていく。また、それらに目を通すことで、高吉所長も部下の考えや行動が手に取るようにわかるようになる。